教育・研究

図書館だより 第13号 2000.7.6

[目次]


知っていますか?図書館の仕事

第3回『他大学図書館との相互利用』



 第11号から2回にわたって普段皆さんの目に触れない図書館の仕事をご紹介して来ました。最終回の今回は他大学の図書館との相互利用についてです。日本の大学の図書館では、自館で収集出来ない資料や情報を、相互に助け合うことによって利用者に提供出来るよう様々な点で協力しています。今回はその中から文献複写物の入手と図書の借用についてご説明します。

<依頼文献の調査>
 まず皆さんから取り寄せを希望された文献が本当に当館に無いのか確認します。所蔵が無いことを確認したら、次に他大学に複写や借用の依頼を出すために、索引誌や抄録誌、出版者のホームページ等から、希望された文献の詳しいデータを調べます。依頼を受ける側の図書館で、依頼された文献を特定出来るように、詳しいデータを送る必要があるからです。図書館では、あらかじめ利用者から著者、論題、掲載されている雑誌名などわかっている範囲の事項について教えて貰いますが、そのデータが正しいかどうかを確認し、足りない事項について調べます。あらかじめわかっている事項が多ければ多いほどこの作業は早く済みます。

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<他の図書館へ依頼>
 詳しいデータの調査が終わると、NACSIS Webcat、いろいろな図書館の蔵書目録やホームページで、その文献の所蔵館を探します。まれに所蔵館がみつからない文献がありますが、その場合はこの時点で利用者に連絡します。次に、文献の所蔵館にオンライン、FAX、郵送などの手段により複写や借用の依頼を出します。依頼した図書館の都合(貸出中や製本中など)によっては、断られる場合もあります。そうした場合受け付けてくれる図書館に行き当たるまで依頼を繰り返します。大学図書館から入手出来なければ、国会図書館や民間の研究所の資料室、企業の資料センター、場合によっては海外へ依頼することもあります。

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<文献の到着>
 依頼した文献は郵送により届けられます。複写物をFAXで送って欲しいという利用者がいますが、文献をFAXで送信する事は著作権法により著作者の許諾が必要ですので、許諾を受けているものしか出来ません。現時点ではほとんどの文献がFAXでは受け取れません。 文献が到着したら、正しい文献が届いたか、落丁や乱丁はないか、請求された料金などを確認し、利用者に文献の到着を連絡します。もし間違った文献が届いたり、落丁等があった場合はクレームを出し、送り直して貰います。

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<文献の引き渡し>
 図書館カウンターで申込者に文献をお渡しします。複写物は無料ではありません。複写枚数に応じた複写料金と郵送代の実費を負担して頂きます。  

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<借用図書の返却>
 他大学から図書を借用した場合は、指定された返却期限までに図書を郵送で返却します。借用した図書は原則として期限を延長する事は出来ません。   

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<料金の支払>
 複写料金の支払期限までに料金の支払をします。これで文献1件の取り寄せが終了します。

>残念ながら、皆さんから申し込まれた文献を100%入手する事は出来ませんが、少しでも100%に近づけるよう様々な手段を尽くして努力しています。 さて、当館から他大学に文献を依頼する場合をご説明しましたが、図書館同士お互いに助け合っているわけですから、もちろん当館でも他大学の図書館や他機関から複写や貸出の依頼を受けています。昨年度は当館から他機関への依頼が約1,200件、他機関から当館への依頼が約500件でした。


上野原探訪



 本学の出身地別学生数をみると、山梨県外の方が大多数を占めています。ですから毎日通学していても、上野原のことについてあまり知らないという方も多くおられると思います。そこで、今回はこの町の情報とそれに関連する資料をご紹介します。夏休みには地図を片手にこれらのスポットを訪ねてみませんか。

●文化財
 上野原町には国の天然記念物である上野原小学校の大ケヤキをはじめとする45の文化財が国、県、町の指定を受けています。また町内にはこれまでに116ヵ所の遺跡が発見されています。例えば...

★保福寺の雲版
保福寺は上野原小学校裏にあり、中里介山の『大菩薩峠』にでてくる「月見寺」のモデルとなった寺としても知られています。雲版とは、輪郭が雲に似た板で、法要や食事のときに合図として打ち鳴らされた梵音具のことです。この雲版は、1385年の室町時代の作で県の文化財に指定されています。

★法性寺の木造阿弥陀如来座像
法性寺は鶴島地区にあります。本像は武蔵国豊島郷下谷の灯明寺から請い受けたとされており、檜材の寄せ木造りで、藤原時代の特徴が法衣や面貌によく表れています。本像も県の文化財に指定されています。

★大堀Ⅰ遺跡
秋葉山の西麓にあります。平安時代の住居、集石土こうなどの遺構のほか、10世紀前半に甲府盆地で制作された土師器杯、瓶、縄文時代中期の土器や石器が見つかっています。調査地点は調査終了後宅地化されました。

★大倉遺跡
 鶴川の支流である仲間川北岸の河岸段丘上にあります。縄文時代中期末の柄鏡型敷石住居と竪穴住居、土製円盤、石ぞく、石さじなどが見つかっています。調査地点は発掘後に埋め戻され、現在は畑として利用されています。磯貝正義,飯田文弥著『山梨県の歴史』は山梨県全体の歴史がコンパクトにまとめらています。一読すればこの土地の理解が更に深まるでしょう。

●旧甲州街道
 江戸時代に作られた五街道の一つに甲州街道があります。甲州街道は江戸日本橋を起点に八王子-甲府を経て中山道の下諏訪まで続く交通路でした。現在の国道20号線を鶴川入口のバス停で県道に折れると旧甲州街道に続きます。上野原町には上野原宿、鶴川宿、野田尻宿、犬目宿の4宿がありました。中でも犬目宿付近は富士山の眺めがすばらしく、江戸時代の画家葛飾北斎はこのあたりで「冨嶽三十六景」の中の「甲州犬目峠」を描いたとされています。また、荻生徂徠の『徂徠集-峽中紀行』の中にもこれらの宿の記述があります。最近の書物では、つげ義春著『貧困旅行記』NHK歴史誕生取材班編『歴史誕生 第12巻』の中にも犬目宿にまつわる話が登場します。 

●長寿村
 上野原町棡原(ゆずりはら)は日本有数の長寿村として知られています。自然に恵まれ、雑穀やいも、豆類を中心とした同地区の伝統食が長寿や健康維持の要因となっているといわれています。しかし最近では交通の発達により食生活などが変化し、生活習慣病が増える傾向も出ているそうです。棡原を研究した資料に古守豊甫の『長寿村・棡原』『長寿村の教えるもの』『長生きの研究』等があります。

●町民プール
 水泳好きの方には、島田地区にある「上野原スポーツプラザ町民プール」をおすすめします。2階建ての施設で、1階には1年中泳げる温水プールがあます。プールサイドに植えられた熱帯植物が、常夏の雰囲気を醸し出しています。また、2階にはトレーニングルーム、食堂、マッサージ室等があります。水泳を基礎からマスターしたい方は、糸山直文著『初心者のための水泳教室』波多野勲,波多野宏著『ザ・水泳』等のテキストを参考にしてはいかがでしょうか。豊富なイラストや写真を用いて、様々な泳法をわかりやく解説しています。(町民プールの休館日:月曜日,国民の祝日の翌日、プール使用料:町内者400円,町外者800円、℡63-6070)

●うえのはらハーブガーデン
 鶴島地区にある「うえのはらハーブガーデン」には、660㎡のエリアに約100種類のハーブが植えられています。7月はラベンダーが見頃を迎えています。ハーブの芳しい香りと、のどかな景色が夏の疲れを癒してくれることでしょう。レスリー,ブレムネス編『ハーブ事典』等でハーブの名前を頭にインプットしてから出掛けると、より一層楽しめるかもしれません。(入園無料、℡63-1438)

●クリーンセンター
 私たちの生活に深く関わっている問題に環境問題があります。近年、可燃ごみから発生するダイオキシンが全国的に問題になっています。上野原町のごみは神奈川県藤野町との境にある「クリーンセンター」と呼ばれるごみ焼却施設に集められます。この施設には焼却炉が2基あり、処理能力は1日約40tです。施設見学も随時行っていますので、予約(℡63-1273)をしてから一度見学をしてみてはいかがでしょうか。また、当館では"環境"に関する図書を多数所蔵しています。たまには地球環境問題についてじっくり考えてみませんか。図書は2階の分類番号"519"の書架をご覧ください。

赤色の資料は当館にあります。下記のリストをご覧ください。

書  名 編著者 出版者 請求記号
山梨県の歴史 磯貝正義,飯田文弥 山川出版社 210.08/Ke51/19
貧困旅行 つげ義春 晶文社 291/Ts39
歴史誕生 第12巻 NHK歴史誕生取材斑 角川書店 210.8/N69/12
初心者のための水泳教室> 糸山直文 高橋書店 785.2/I91
ザ・水泳 波多野勲,波多野宏 日本文芸社 785.2/H42
ハーブ事典 レスリー,ブレムネス編 文化出版局 617.2/B72(参考図書)

参考文献:『広報うえのはら』上野原町役場総務課刊、『山梨県史』山梨県刊


リレーエッセイ ふたこと・みこと



読書のすすめ-「複雑系」の場合    

環境マテリアル学科教授 中條 利一郎



 研究者生活を続けていると、次々に新しい概念に遭遇する。それを取り入れると、研究が思わぬ方向に進展する。急に目の前が開けてくる。取り入れるのにどうすればいいか?第一歩は、その概念についての初歩的な本を読むことである。
いろいろな新しい概念の中で、どの学科の学生君にも関係のありそうなものとして、「複雑系」を取り上げてみよう。私の書棚には関係のある書物が9冊ある。それらの中で、学生君向きの3冊を紹介しよう。
 古典的な物理学では複雑な系をそのまま取り扱うのではなく、その中で最も重要と思われる概念だけを取り入れて、理論を構築する。これをモデル化という。複雑系の理論ではそうはしない。かと言って、複雑だ、複雑だと騒いだだけでは前進しない。つまり、複雑系についての定義が必要である。そのためには、吉永良正著『「複雑系」とは何か』(講談社現代新書,1996)がお奨めである。複雑系と似た概念にカオスというのがある。両者のちがいは上記の書物にも書いてある。両者のちがいをもっと具体的に知りたい場合、米沢富美子著『複雑さを科学する』(岩波科学ライブラリー,1995)がよかろう。
 学問はしばしばとんでもなくかけ離れた分野と関係する。複雑系のそのような例として、経済学への展開がある。塩沢由典著『複雑さの帰結』(NTT出版,1997)はその手引きである。
 ここに掲げなかった書物も勿論面白い。でも、これら3冊を読んだ後で読む方が深みのある読書になること請け合いである。

*このエッセイで紹介されている本は当館にあります。
 『「複雑系」とは何か』 404/Y92
 『複雑さを科学する』 404/Y84
 『複雑さの帰結』 331/Sh79


図書館ガイダンスを終えて

セミナーの様子

 今年度もフレッシュセミナーの一環として、4月から5月にかけて図書館ガイダンスを実施しました。本年は、約420名の新入生が受講しました。10名前後のグループ毎に約50分で、利用案内、資料の並び方のしくみ、施設の紹介等の説明、そして実際にOPACを使用して図書を検索する演習を行いました。ガイダンスを受けたことにより図書館を利用する機会が増えることを願っています。                     


お知らせ

  •   ★開館時間の変更について
  • 期間:7月31日~9月16日
  • 開館時間:月曜~金曜日:9:20~16:30
                土曜日:9:20~12:00
  •   ★臨時休館日について
  • 8月12日~8月16日(大学一斉休業のため)   
  • 8月28日~9月2日(蔵書点検のため)
  •   ★夏期休業に伴う長期貸出について      
  • 期間:7月27日~9月8日   
  • 返却日:9月22日   
  • 貸出冊数:通常通り