教育・研究

図書館だより 第27号 2004.10.22

[目次]



卒業研究と図書館 -先輩からの応援メーッセージ-

 卒研生の皆さん、卒業研究も追い込みの時期を迎えましたが、頑張っていますか?今回は皆さんの先輩である大学院生に、卒研時に役立った資料や、図書館の活用法などをご紹介いただきます。

大久保 英一(先端科学技術専攻)

 私は大学院生になってから、週に1度は図書館をふらふらと散歩して気の向くままに書籍を眺めていました。特に雑誌のコーナーでは『Linux magazine』『ASCII』『旅』等を良く眺めていました。たまに気になった資料をコピーして研究室で読み直すこともしていました。雑誌だけでなく新聞も12種類もあるので、とっていない新聞をみていることもありました。もちろん雑誌や新聞の閲覧だけでなく書籍の面でも大変重宝しました。私の卒業研究ではLinuxとC言語、ネットワークに関連したので『基礎からわかるTCP/IPシリーズ』(オーム社開発局)『やさしいC』(高橋麻奈著/ソフトバンクパブリッシング)『学生のためのUNIX』(山住直政著/東京電機大学出版局)はどれも基礎的事項から丁寧に書いてあるため重宝しました。『基礎からわかるTCP/IPシリーズ』は用途毎に分冊されていますが、「○○を作りたい」という目的を的確に支援してくれます。『やさしいC』はC言語の基礎がわかりやすく書いてあるのでお勧めです。『学生のためのUNIX』は他にも"学生のための~"というシリーズ物があります。このシリーズは中身も2色刷りが多く、飾り気が少ないですが、同時にそれほど厚くなく文字も大きいのでわかりやすいです。
 「図書館」は本を借りるだけの場所にしておくのは惜しいと思います。研究室生活になったときの気分転換に非常に良い場所だと私は思います。論文に行き詰ったときなどは場所を変えて考えると非常の良いアイデアが浮かぶこともありました。自分の主専攻と違う分野の書籍を眺めてアイデアが浮かぶこともしばしばあります。実験研究棟からはやや離れていますが、実験待ち時間の散歩コースに組み込んではいかがでしょうか。

宍倉 香(環境マテリアル専攻)

 私の卒業研究テーマは、「エイズワクチンの合成」です。そして大学院に入った今も同じテーマで研究をしています。卒業研究のテーマをもらってからは、エイズの知識はもちろん、感染症や免疫系についても勉強しました。それはエイズは感染症の一つで、免疫システムに深くかかわっている病気だからです。
 図書館の蔵書で私が一番最初に読んだエイズ関連の書籍は、『感染と免疫』(John Playfair著/東京化学同人)という本です。これはエイズや免疫系に興味のある方にとって、知識がなくても簡単に読める入門書として、とても分かりやすいものでした。どんな研究に対しても言えることだと思いますが、幅広い知識は必要でしょう。私の場合では、単にエイズと言っても、"化学"の立場から考えるときもあれば、"経済"の視点から考える時もあります。なぜなら、エイズは先進国より発展途上国の方が深刻なのが現状です。そのため貧しい人達が多い国々は、高価な薬をなかなか使う事ができません。その様な状況を考えると、特別な薬品を使ってのワクチン合成は、発明できても必要性が低いのではないでしょうか。どこにでもあるモノで簡単に作れる事が、一番良いと考えられます。この様に考えるきっかけを感染症と現代社会というテーマでこの問題を取り上げていた、雑誌『科学』から学びました。
 またさらに広い知識をと考えている方には、雑誌『Science』がおすすめです。地学、動物、宇宙、自然など色々な分野の最新の記事がたくさん載っています。写真がたくさん使われているので、私は卒業研究で行き詰まった時の、息抜きに見ていました。
より感染症と免疫関連に専門的な雑誌『Infection and Immunity』では、世界中の研究者が書いた論文が載っています。世界でどのような実験が行われているかが分かります。私はこれを読んで卒業論文の考察部の参考にしました。
 卒業論文は大学生活を締めくくる大事なものです。そして新しい知識を身につけ社会に出るチャンスでもあります。そのチャンスをいかして、ぜひ前途ある論文を書いてください。

吉澤 航司(環境マテリアル専攻)

 私の卒研テーマは、半導体工学とロボット工学を足して2で割ったような「走査型トンネル顕微鏡」という、原子レベルで物質を観察することができる顕微鏡を製作することでした。この研究に就いて思ったことは、ものを製作するということは一つの分野を学んだだけでは実現できず、様々な知識が必要になるということです。今回のテーマですと半導体工学、電子回路、制御工学、機械設計、機械加工技術、プログラム、CGなど他にも沢山の知識や技術が必要になります。これらの中で図書館や本屋などの書籍からは比較的手に入りづらい知識として、機械加工技術があると思います。この技術は職人技と同じで、実際に人に教わり、自分の手で物を削ったり、穴を開けたりしなければ身につかないものです。
 そんな中で、技術を学ぶための数少ない入門書として役に立ったのが、『図解もの創りのためのロボット工学』(門田和雄著/技術評論社)と『図解もの創りのためのやさしい機械工学』(門田和雄著/技術評論社)です。どちらの本も、工学に関する幅広い分野を分かりやすく解説しており、前者は工作をメインに、工具の扱い方やロボットを作製する際の設計方法や考え方について学べます。また後者は、前者がものを作るための応用的な内容だとすれば、より基礎的な、材料の性質から物理学の法則、歯車を使った機構まで、数式を交えて説明されています。この2冊があれば、少なくとも物を設計し実際に作るということが、どういうことなのかが理解できると思います。
 卒業研究は1年という限られた時間の中で、自分の納得する成果が出せるかどうかが大事なのだと思います。学問に王道なしという言葉がありますが、この限られた時間を有効に活用するためには、出来る限り近道を探すこともまた重要です。その為の先生であり、先輩であり、図書館であり、インターネットではないでしょうか。これらの有用な人やツールを上手く活用できることが、卒研を成功させる秘訣だと私は思います。

塩谷 盛泰(経営情報システム専攻)

 私が卒研生の時の図書館の利用法は、ITスクエアでインターネットを用いて情報を収集した程度のことしか思い当たりません。二、三年生の時に講義の実験でレポートを書くために資料を調べた記憶はありますが、卒研に入ってからは自分から進んで図書館へ足を運ぶということはありませんでした。ただ、上に述べた通り、ITスクエアはよく利用した記憶があります。ここのパソコンは自由に使うことができるので、ちょっとした情報がほしい時に重宝します。
 あと私が利用したことといえば、空いた時間にちょっと勉強をするために図書館を利用したくらいです。図書館は他の場所と比べると静かなため、集中して勉強したい時には最適な場所だと思います。私の場合は図書館に入ると勉強をしなければという強迫観念のようなものにかられるため、そこへ行くと集中して学習することができました。このように私はあまり図書館の資料を利用することなく終わってしまいましたが、資料を利用することはなくても図書館の独特な雰囲気の中でなら集中して学習することができるので、そこでなら学習がはかどるのではないかと思います。
 資料も探して調べればたいていの事は調べられると思います。時には自分の興味のありそうな所を調べてみると何か発見できるかもしれません。私も最近はそのようにして図書館の中を歩き回ることがありますので。

根岸 崇(経営情報システム専攻)

 私の場合、研究分野がまだ新しい分野だったため、研究そのものについて書かれた文献というものは、まだそう多くないという状況でした。基本的な諸技術についての文献は多くあったので、その手の文献を借りて読んだ記憶があります。ただ多くの文献は、お恥ずかしい話なのですが私にとって内容がとても難解だったため、実際には借りても数ページだけで返却してしまうということも多々ありました。
 自分の経験からこれから卒業研究を始める皆さんには、最初から難しい文献よりある程度読みやすく内容も簡単なものをお勧めします。たとえそれがどんなに基礎的なことが書かれた文献でもです。たぶん、基本すぎて忘れてしまっていることが多くあり、改めて納得できることもあると思います。またその内容を理解していくことによって、知識の基礎がしっかりと身に付くことにもなりますし、その先にある難解な文献へとステップになっていくと思います。
 また図書館の利用法は、ただ本を借りるだけとは限りません。文献のコピーを取り寄せたり、他の大学などへの紹介をしていただくこともできます。詳しくは図書館の職員の方へ聞いてみてください。
 インターネットを利用するというのも利用法の一つです。皆さんも利用していると思いますが、現在はインターネットでいろいろな文献を調べることができます。私が所属していたメディアサイエンス学科では、パソコンに困るという事はあまりないのですが、他の学科ではパソコンの数が限られているという話を聞きました。図書館には、何台かインターネットに接続できるパソコンがあります。これを利用しない手はないと思います。
 最後になりましたが、今卒業研究に取り込んでいる人も、これから研究を始める人も、図書館を上手に利用し、研究をがんばって下さいね。


リレーエッセイふたことみこと



 「情報化社会と読書」                                            

メディアサイエンス学科助教授 木村 龍平


 社会の情報化が進み、パソコンが一家に一台、いや二台、三台の時代になった。それらは、ADSLや光ファイバーでインターネットにせつぞくし、100baseTX程度のイーサで家庭内LANを構築していることも珍しくない。そうなると色々な世の中の活動がネットやパソコンの存在を前提としたものになる。小学校でインターネットを使った調べの宿題が出たり、色々な割引特典がネット会員に限定されていたり。最近、新幹線の指定券もネット予約になった。日々の仕事はもちろんのこと、何をするにも「まずネットで調べて...」となる。勢い、HPに始まり電子ファイル、電子マニュアル、果ては電子書籍といったものを読まされる機会が多くなる。しかしだ。私はこのような形になった文章を読むのが苦手だ。いくらPDFやビューワーが進歩して「しおり機能」やら、「縦書き表示」やら可能になっても、どうしてもPCのディスプレイに向かって読むという行為に馴染めない。わざわざ全て印刷して紙媒体にすることもある。一方、本を手に取り、1ページ、1ページめくりながら読み進む。ふと前に読んだ部分が気になりパラパラと前のページに戻ってみる。目次や後書きにとんでみる。小鳥のさえずりが遠くに聞こえ秋風がそよそよと吹けば、紙やインキのにおいがし、ページがパラッとめくれあがる。そんなとき紙面の文字は目に優しく、イマジネーションは大きく膨らんでいく。そんな読書が好きなわたしだが、日頃はPowerPointやPDFで教材を作り、ブンブン唸りを上げるMacの前で、ホイールマウスを駆使して学生の提出したWordのレポートをCD-ROMから何十通と読んでいる。



お願い... 「置き忘れ」にご注意ください!!


 教室などキャンパス内に図書館からの貸出図書の置き忘れが目立っています。罰則や弁償の対象となるだけでなく他の利用者にも迷惑を掛けることになりますので、返却するまで責任を持って管理してください。万一、置き忘れてしまったら、そのままにせず必ず図書館に連絡してください。また、町立図書館など公共図書館の図書も置き忘れないよう十分注意してください。


お知らせ


科大祭に伴い下記の通り開館時間が変更となります
  11月5日(金) 9:20~17:00
  11月6日(土) 10:00~16:00
  11月7日(日) 10:00~16:00
  11月8日(月) 9:20~17:00

本学推薦入試のため11月13日(土)は休館となります。