教育・研究

図書館だより 第9号 1999.7.14

[目次]


映画になった小説~こんな作品あんな作品~


 今夏の映画界もたくさんの話題作で賑わっているようです。作品の中には小説や新聞連載の四コマ漫画が原作となっているものもあります。ここでは、そんな映画化された小説を新旧取り混ぜて数冊ご紹介します。さて、あなたはもう読みましたか?

『鉄道員(ぽっぽや)』 浅田次郎著 集英社 請求記号:913.6/A81
 厳しい冬の北海道の小さな終着駅。定年間近なこの駅の駅長佐藤乙松は、不器用なまでに一途に鉄道員としての誇りを持って生きてきた。2年前には妻を亡くし、17年前には生後2ヶ月の一人娘を亡くしている。愛する妻や娘の臨終にさえ、職務に忠実なあまり立ち会うことが出来なかった。愛する者を守れなっかという悔恨の念を胸に秘めながら、乙松は極寒のプラットホームに立ち、駅を守り続ける。そんなある日、人形を持った可愛い女の子が乙松の前に現れる。
 『鉄道員(ぽっぽや)』は第117回直木賞を受賞し、150万部を超える大ベストセラーとなった作品である。そして、今年6月に映画化された。監督は降旗康男。乙松役には高倉健、その妻の静枝役には大竹しのぶ、そして乙松の前に突然現れる美少女役を広末涼子が演じている。 原作では乙松が妻や友人仙次との思い出を振り返るシーンはあまり描かれていないが、映画では回想形式により、それぞれとのエピソードがふんだんに織り込まれている。そうすることにより、乙松の人柄が一層鮮明に浮かび上がってくる。また、全編を通して雪景色が情感たっぷりにスクリーンを覆い、「D51」やすでに現存していない気動車「キハ12」も登場し、その勇姿や汽笛の音響効果が、原作にスケールをもたらしている。

『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス著 早川書房 請求記号:933/Ke67
 知能障害のあるチャーリーは文章もまともに書くことができないが、学びたいという強い意欲を持っていた。そんなチャーリーはある日、知能を高めるための手術を受ける機会を得る。この手術は大学の研究室で行われるもので、それまでに動物でしか行われておらず、成功するとは限らない実験的な手術だった。しかし、賢くなりたい一心のチャーリーは手術を受けることを強く望んだ。手術後、チャーリーの知能は驚異的に増し、彼はそれまでの世界とは大きく異なる世界を知ることになる。しかし、先に同じ手術を受け高い知能を得ていたネズミのアルジャーノンに、やがて変化がおとずれる。チャーリーはそれを見て、自分がこの先どうなっていくのかを知る。
 物語は手術を受けたチャーリー自身が記す日誌「経過報告」を読む形で進んでいく。最初のうちは間違いだらけのたどたどしい文章が続くので、読みづらく感じるかもしれないが、これがその時のチャーリーの状態であり、知能が増すにつれて巧みな文章へと変化していく。日誌にはチャーリーの正直な思いが綴られ、最後の一文にはほろりとさせられる。 この物語は1968年に映画化された。監督はラルフ・ネルソン。知能の変化を遂げる主人公チャーリー役をクリフ・ロバートソンが演じ、アカデミー主演男優賞を受けている。日本では「まごころを君に」というタイトルで公開された。

『ジュラシック・パーク』 マイクル・クライトン著 早川書房 請求記号:933/C92/1,2
 コスタリカ西海岸の離島で大規模な工事が進められていた。それは遺伝子操作によって恐竜を現代によみがえらせ、それら の恐竜が自由に動き回るのをツアー見学するという恐竜サファリパークの建設工事だった。1年後の開園に向けて専門分野の 研究者たちが集められ、そのパークが十分に安全なものであるかを判断するためのツアーが行われることとなった。しかし、 ツアーに出た彼らを予想外のアクシデントが待ち受けていた。
 バイオテクノロジー、電子工学、恐竜論等の科学技術や理論を取り入れたSF小説で、全2巻の長さがあるが、リアルでいきいきとした描写とスリリングな展開で楽々と読み進めることができるだろう。 この物語は1993年に映画化され、最優秀視覚効果賞、最優秀音響賞、最優秀音響効果編集賞の3部門でアカデミー賞を受けている。監督はスティーブン・スピルバーグ。アクシデントに巻き込まれる古生物学者グラント博士、女性植物学者サトラー博士役をそれぞれサム・ニール、ローラ・ダーンが演じている。原作はバイオテクノロジーの暴走やリゾートの乱立など、ヒトの横暴に対する警鐘としての性格が濃厚なのに対し、映画ではそういった社会的な面は失われてしまっている。しかしながら、CGにより再現された恐竜の様子はまるで本物がよみがえったかのようにリアルで、原作以上のスリルと迫力を味わうことができるだろう。続編に『ロストワールド』があり、同監督によって映画化されている。



情報収集 Part 2
答えはどの資料のなか?物知りKくんの知識の秘密!?



 皆さんの周りにやたら博識な人っていませんか? どこからそんな知識仕入れてくるんだろうって不思議に思ったことありませんか?「雑学の本を読むのさ」なんて言ってないで、こんな方法であなたも調べて見ましょう。   

 図書館2F。雑学好きのKくんは今日も調べものに励んでいる。

■ちょっと前にトキの雛が生まれて話題になったけど、日本にはトキの他にも絶滅しそうな動物っているのかな? Kくん、腕組みをして何から調べようか考え中。やはり最初は『現代用語の基礎知識1999』(013/G34/1999)に手をのばす。試しに「絶滅」で引いてみると「絶滅危険種」という項目がある。 見てみる。

  • "レッドリスト(→別項)では、絶滅の恐れが最も高い生物種を絶滅危惧種としてランク付けしている。"1)、"環境庁ではそれに合わせ、絶滅種、絶滅危惧種、危急種、希少種、該当なしの五ランクに分けている。"2)

とある。次にレッドリストを引いてみる。「レッドデータブック」という項目にでてくる言葉だ。

  • "環境庁では九一(平成三)年に、レッドデータブックの「脊椎動物編」と「無脊椎動物編」を、九八(平成一〇)年八月には「植物編」を発表した。"3)でも別の頁に"植物版レッドデータブックの作成作業も進められており、"4)

とあって、どっちがほんと? 

■ともかく環境庁が出したリストがあるんだ。ブックって言うからには本みたいになってるよね。
じゃあ次はOPACだ。Kくん1Fにおりて、慣れた手つきでOPACを検索する。レッドデータブックは所蔵されていない。 仕方ないので環境白書にあたってみる。再び2Fだ。『平成11年版環境白書<総説>』(519/Ka56/1999-1)にレッドデータブックについての記述があった。

  • "環境庁では、平成3年に、我が国の絶滅のおそれのある野生生物の個々の種の生息状況等を「日本の絶滅のおそれのある野生動物(通称:レッドデータブック)-脊椎動物編-、同-無脊椎動物編-」として取りまとめた。このレッドデータブックは、野生生物の生息状況や生息環境の変化に対応するために定期的な見直しが必要であり、これまでに両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類及び汽水・淡水魚類の新しいレッドリスト(レッドデータブックの基礎となる日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)の取りまとめを終了している。植物についても平成9年8月にレッドリストをまとめ、現在レッドデータブックを作成中である。"5)

ランクについての説明と種の数は記されているけど具体的な種の記述はない。

■つまり、今あるレッドデータブックは内容が古くて、レッドリストが一番新しいってことだな。ランクも増えてるし、ついでにリストも載せておいてくれればいいのに。 Kくん、今度は新聞記事がないか調べてみる。こんな時便利なのはインターネット。毎日新聞のホームページで過去の記事を検索してみる。 「レッドリスト」で見つかった。

  • "レッドリスト:絶滅の危機137種に倍増 環境庁発表 1998.06.12."6)、"絶滅危険種:メダカなど76種がレッドリストに 1999.02.18."7)。

念のため朝日新聞の縮刷版も見てみよう。これは3Fだ。1998年6月13日に記事がある。

  • "絶滅の恐れのある国内の野生生物のリストについて環境庁は十二日、ほ乳類と鳥類に関する見直し結果を公表した。・・・今回、国際自然保護連合(IUCN)が一九九四年に採択した新基準にもとづき見直した。"8)、"新レッドリストに上げられた主な野生種"9)の表がある。

■トキっと。あるある。オオワシ、スグロカモメ、... トド? そういえばさっき毎日新聞のホームページで見たメダカが、これには載ってないな。 環境庁のホームページなら載ってるのかな?環境庁のホームページ10)にアクセスしてみる。行政資料の中に"レッドリストについて"11)がある。汽水・淡水魚類レッドリストを見てみる。

■メダカっと...あった。絶滅危惧II類だって。え、ムツゴロウ?! 他のも見てみよう。

   掲載箇所:
1),2)  「現代用語の基礎知識1999」(013/G34/1999) p.949
3)    「現代用語の基礎知識1999」(013/G34/1999) p.947
4)    「現代用語の基礎知識1999」(013/G34/1999) p.144
5)    「平成11年版環境白書<総説>」(519/Ka56/1999-1)pp.466-468
6),7)   http://search.mainichi.co.jp/news/search/
8),9)  「朝日新聞縮刷版 1998年6月号」p.623
10),11)  http://www.eic.or.jp/eanet/

■さて、Kくんはこの調べものの途中でまたまた気になることがでてきたようです。今度は皆さんも調べてみてください。 (チャレンジ・コーナーの答えはカウンターで差し上げます。)

チャレンジ・コーナー

問1.種の保存法とはどのような法律か。いつ公布されたか。
         ヒント:俗称である。正式名称が何かわかれば自ずと道は開ける。
問2.「甲斐八珍果」とは何か。
         ヒント:甲斐というからには山梨県に関係があるのだ。
問3.ウルトラマンが最初に放送されたのはいつか。
         ヒント:この図書館に芸能関係の図書などあるのでしょうか。
問4.NATOとは何か。
         ヒント:なし
問5.2002年のユーロ紙幣・硬貨の流通開始で姿を消す通貨は何か。
         ヒント:ユーロになる国、ならない国に注目しましょう。



リレーエッセイ ふたこと・みこと 

「図書館の思い出など」      外国語科目教授 大山幸房

 今から25年前、私はスイスのジュネーブに本部を置く「世界知的所有権機関」(WIPO)という国際機関(国連の専門機関)に研究員として留学していた。当時WIPOは隣接地に14階建ての新ビルを増築中であり、私のために個室を提供する余裕はなかった。そこで私は5階建ての旧ビルの4階にあった図書館の読書室に席を確保してもらった。 この図書館には毎日WIPO職員のほか、外部の研究者がよく調べ物に来ていた。特にある大学院生(名前は失念した)は博士論文を執筆中とのことで殆ど毎日通っていた。私自身は図書館の本を借りることは稀で、WIPO関係の会議資料を資料室のダモン女史から貰って読む毎日であった。 図書館長は南フランスのモンペリエ出身のザルプ女史で、話し好きでよくコーヒーやチョコレートをご馳走になった。ほかにフランスの大学を出たベトナム人司書のグエン・カーン氏とフランス人女性職員のデビラールさんがいた。 その後WIPOの会議には殆ど毎年(多い時は年に4回)出席しているが、その際にグエン氏とは何度も再会している。今年の5月にも何年か振りで同氏と再会し、お互いの健康を確認し合った。 更に遡って大学生時代には、当時大学の図書館が未整備であったこともあって、「赤坂離宮」(現在の「迎賓館」)内にあった国会図書館をよく利用した。フランスのベルサイユ宮殿を模したというこの建物は内部の装飾が豪華で天井も高く気持ちがゆったりした。当時どんな本を借りて勉強したか記憶が定かでないが、大学の先輩でもある永井荷風の『ふらんす物語』などを借りて読んだことだけはよく覚えている。



図書館ガイダンスを終えて

 今年度もフレッシュセミナーの一環として、4月から6月にかけて図書館ガイダンスを実施しました。本年は、40名の教員から応募があり、約400名の新入生がガイダンスを受けました。10名前後のグループ毎に約50分で、利用案内、資料の並び方のしくみ等の説明、そしてOPACを使用して図書を検索する演習を行いました。このガイダンスが、新入生の図書館活用の一助になることを願っています。



■ ■ ■ Q&A ■ ■ ■

Q 読みたい雑誌があるのですが、図書館にあるかどうかわかりません。雑誌があるかどうか簡単に知る方法がありますか? 

A OPACで検索できます。図書と同じようにして検索してください。詳細表示画面で所蔵巻号と年(いつからいつまでの分を所蔵しているか)が表示されます。また、冊子体の雑誌目録がカウンターに置いてあります。こちらも雑誌名で引くと所蔵巻号と年がわかります。ご利用ください。



お知らせ

  ★開館時間の変更
   期間:1999年8月2日(月)~9月18日(土)
     月~金:9:20~16:30
       土:9:20~12:00
  ★臨時休館日
    1999年8月12日(木)~8月16日(月)
  ★夏期休暇に伴う長期貸出
    期間:1999年7月30日(金)~9月10日(金)  
    返却日:1999年9月25日(土)
    貸出冊数:通常通りとします。