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第95回「「自分の財産になる生活の積み重ね」(2013.7)

学科長・教授 小池 和男

学科長・教授 小池 和男

  私は、九州の田舎で育ちました。広大な田園に囲まれ、空気の澄みきった自然の中で、今よりはずっと不便な日常生活でしたが、父母、祖母、叔母、妹、弟の10人以上の家族と共に、愛情を通わせ、助け合い、支え合って過ごしてきました。

  正月やお盆、秋祭りには、嫁いだ叔母やいとこが大勢集まってきます。その数は、年々増えてきましたが、母が中心となって田舎料理を手作りし、30人もの親戚が一堂に会して口にした料理はいつも格別でした。お盆には決まって、有明海で獲れる「むつごろう」の蒲焼きが用意されました。大きなたらいに入れていると飛び跳ねて出てしまう活きのいい、こっけいな表情をした魚です。特性のタレでいただく味は忘れられません。(*「ムツゴロウ」スズキ目・ハゼ科に属する魚の一種です。有明海沿岸の潮が引いた干潟の上で生活する魚で、全長15センチメートル程度。体色は褐色、暗緑色で全身に白か青の斑点があり、両目は頭上に突き出ている珍魚?です)

  夏野菜はふんだんに裏庭の畑で栽培されていたので、キュウリやナス、真っ赤に実った皮厚のトマトを年上の私がいとこを引き連れて一緒にもいで収穫するのもお盆の時の楽しみでした。食事の後の留めは何といっても冷水で冷やした大きなスイカ。父が切れ味のよい包丁で等分に割って皆で分け合って食べるのが待ち遠しいひとときであったように懐古しています。

  家が隣町との境界地にあったため、小学校までは遠く、片道4キロメートルほどの道のりを近所の子ども4~5人でゆったりと歩いて行きました。都会地と違って、ゆるやかな、たっぷりとした時間の中での生活、急ぎ足なら40分もあれば到着するのに、自然の中で大いに道草をしての学校の行き帰りです。

  悪さをしては近所の大人に叱られ、諭される毎日。怖いものだからか、強く叱られた人には会いたくなくて遠回りをしたりしながら、逃げ足も速くなっていったことを覚えています。しかし、こうした近所の人や自然とのかかわりの多さは、知恵と心と体力をはぐくむ大きな力となり、財産になっています。30代の後半で大病を患って入院・加療をしましたが、子どものころのこうした経験が「貯金」になっていたんだなあと振り返るこのごろです。

  この夏、皆さんたちは、どんな人にどんなことで褒められ、叱り・諭され、見守られ、そして自分自身を様々なかかわりの中でどんなふうに鍛えていくんだろうかと楽しみにしています。変化の激しい昨今ですが、ゆるぎない精神で忍耐強く、一層思いやりをもって人とかかわり、自分のことだけでなくまわりを盛りたてることができるような、自分の財産づくりの機会にしていただけるといいですね。



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