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第102回「金木犀のかおり」(2013.10)

教授 河崎 雅人

教授 河崎 雅人

  日本には、春、夏、秋、冬という4つの季節があり、それぞれの季節には、その季節らしさを感じさせるものがあります。今、季節は秋です。昔、「今はもう秋、誰もいない海」という歌詞で始まる曲がヒットしました。「誰もいない海」も秋を感じさせます。夏、あんなにたくさん人がいたのに、夏が終わりにつれて、だんだん減っていく。いつの間にか、海には人はいなくなり、気がつくと季節は秋に変わっている。秋になるまでは全く存在すら意識することはないにもかかわらず、突然、秋を感じさせくれるものがあります。秋になると必ずどこからか流れてくるよい香り、金木犀(きんもくせい)の香りです。金木犀は、中国桂林地方が原産地だそうです。「桂」は木犀を意味し、「桂林」は、木犀の木がたくさんあることに由来しているとのことです。金木犀の香りは、木がどこにあるかわからなくても、どこから漂ってきます。どこにあるのかと探してみても見つからないことはたびたびです。

  花が咲いた後、雨が降ったり、強い風が吹いたりするとあっけなく散ってしまいます。先日、日比谷公園に行った時、金色の雪のように金木犀の花が落ちていました。幼い子供達は「金木犀だ」といいながら駆け寄っていきます。落ちた一つ一つの花は小さく、どこにあのような強い香りを放つ力があるのかと思ってしまいます。香りだけで存在しているかのようです。いかにして見せようか、見てもらおうか腐心することが多い現代には、逆に、香りだけでその存在に気付かされる金木犀は今の時代に似合っているのかもしれません。



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