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第128回「なぜ年末に「第九」を演奏するのでしょう」(2014.12)

准教授 石橋 裕子

准教授 石橋 裕子

  12月に入ると、ベートーヴェン作曲の交響曲第9番、いわゆる「第九」が全国各地で演奏されます。その公演数は、およそ100回です。「第九」の第4楽章で歌われる『歓喜の歌』は、ヨーロッパでは「EUの歌」とされている他、お祝いの時に演奏される代表曲ですが、日本では年末に演奏されることで知られています。

  日本での初演は、1918年6月1日、徳島にあった捕虜収容所で、第一次世界大戦の青島攻略戦で捕虜となっていたドイツ人たちによって演奏されました。

  太平洋戦争の敗戦後、どのオーケストラも財政難でした。そんな中、日本交響楽団(現NHK交響楽団)が1947年12月9、10、13日にレオニード・クロイツァー指揮で3夜も第9の演奏会を開催して観客を集めました。これを「その手があったか」と他のオーケストラが真似し、その後設立されたオーケストラも右へならえしたのが、「年末の第九」の始まりだといいます。つまり、「餅代稼ぎ」で演奏されていたのです。

  「第九」には、オーケストラのほかにコーラスも参加するので、出演者の総人数がとても多いです。その出演者たちの知人が客として来れば、普段より多くの来場者が期待できます。コーラスもプロを雇ってしまうとコストはかさみますが、学生などのアマチュアに頼めば出演料もあまりかからず、オーケストラの収益はアップします。年末に演奏され始めた1940年代後半、「第九」はとても人気のある曲でした。第二次世界大戦直後の日本はとても貧しく、多くの人が苦労をしていたので、『歓喜の歌』の名前でも親しまれる前向きなイメージの「第九」のメロディが、日本人の心をとらえたのではないかと言われています。

  みなさんも是非、年末に「第九」を聞いてみてはいかがでしょうか。



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