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第137回「ベビーカー考察」(2015.5)

特任助教 田口 直子

特任助教 田口 直子

  ベビーカー。

  明治、大正、昭和と乳母車(うばぐるま)と呼ばれてきたもの。最近では、バギー。バタくさい人は、ストローラーなんて呼んでいるものも耳にする。「赤ちゃん」を乗せて移動する、手押し車のことをこのように呼ぶ。

  これらの形状は時代と共に、変化している。しとしとぴっちゃんで大五郎が乗っていたもの、メリーポピンズの映画で出てくるもの、この時代は箱型四輪車。昭和になるとコンパクト省スペースのA型や、もう少ししっかりして重い、けれどもやっぱり折りたためる形のB型が主流になる。そして平成には、大きな三輪型!これはベビーカーのままなんと階段を上り下りでき、アウトドアやジョギングにも安心なんだそうである。

  ベビーカー論争で

  「混みあった電車の中では、たたむべき」

とか

  「エスカレーターはたたんで乗るべき」

と言われて話の的になっているのは、昭和後半のベビーカーを想定して話されていることが多い。なぜなら、大昔の箱型四輪車はたためない。たためる形のベビーカーを公共の場でどのように使うのかが話題になることが多いようだ。

  あたりまえのようだが、車は危ない。自動車でなくてもタイヤがついているものは危ない。多分エイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」からはじまって、母の手から離れてしまったベビーカーが、階段や坂道をころげおちてしまうという危険な場面は、今でも映画やドラマでよく見かける。実際、ベビーカーではないが、昭和にもてはやされ、しかし子どもが階段からころげおちる事故が多発し「危険認定」され、見かけなくなった子育てに使う車に、歩行器もある。車はころがる。だから、危ない。

  しかしながら、最近の公共機関や公共交通機関における、ベビーカー使用の是否論争に耳を傾けると、車は危ない。だから使い方を考えましょう、という文脈はほとんど無い。

  「満員電車では、ベビーカーが乗るとスペースがないから、たたんでほしい」

ひるがえってベビーカー使用者側は、

  「子育てしている側は、荷物を持って子どもを連れて、こんなに大変なのだから親の大変さをわかってほしい」

  あちら側の大人もこちら側の大人もご苦労さまでお疲れさまなんだなぁと思う。

 

  大人がお疲れさまだからって、子どもの視点からは考えなくていいのだろうか?乳母車の時代はベビーカーに赤ちゃんを乗せていたもの。今は随分と大きい、歩ける子どもがベビーカーに乗っている。「おろしてくれー。ぎゃー」と泣きわめいているうちは、生きる力が感じられまだよい。大きな子どもが無気力にぼけっとしてベビーカーに乗っているのを見ると、「これは十分アビューズだ」と切なくもなる。



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