環境汚染物質に対するホメオスタシス機構の応答を調べ、ホメオスタシスの破綻を個体から分子に至るレベルで究明します。そこから得られる知見をもとに生物 個体への環境汚染物質の影響を予測する新たな評価システムを検討し、生物機能を利用した汚染対策システムなどへの展開をめざします。
1.微生物の汚染物質耐性を利用したセンサーの開発
微生物を電極と組み合わせて構成した新規な毒物センサーを開発します。一般に微生物の呼吸活性は毒物によって阻害されますが、ある毒物濃度以下では逆に活性化します。毒物耐性遺伝子の発現や毒物排出のエネルギーを供給するため呼吸が活発化すると考えられます。この現象に着目して毒物の検出などに適用できる微生物素材を探索します。
2.魚類内分泌攪乱モデルを用いた汚染評価系の開発
これまで行ってきた魚類の精子、卵子形成に関する研究をもとに、昨今問題となっている環境ホルモンによる生殖障害について個体から分子レベルまでの研究を進めています。すでに環境ホルモン曝露により変動する遺伝子を単離しており、今後これらを指標とした影響評価系の開発へ展開します。
3.ウキクサの花性誘導を指標とした汚染評価系の開発
ウキクサに病害抵抗性誘起農薬類(Sas)を投与し花成誘導への有効性を探索します。また安息香酸によって複数のCa2+依存性タンパク質キナーゼ (CDPK) が発現されますが、花成と最も相関がよいCDPKを同定します。次に、花成誘導へ有効性を示したSasがCDPKを誘導するか否かを調べます。
4.植物を利用した水質浄化技術の開発
植物の水耕栽培によりこれまで研究されていない有機物性の染料、有機塩素化合物などの環境汚染物質の生体消化について植物生理代謝における生体ホメオタシス機能の観点から研究するとともに水質浄化技術に応用する研究を行います。現在、クレソンなどの水性植物が酸性染料を取り込み消化することが分かりました。 |