TEIKAジャーナル

第150回「師走に思う」(2015.12)

2015/12/18

  2015年ももうすぐ終わろうとしています。早いもので21世紀に入って15年も過ぎました。21世紀を目前にした1990年代後半には、コンピュータの2000年問題や2000年代を何と呼べばよいか(The Oと呼ぼうという意見もありました)などについて語られたことも、今となってはなんとなく懐かしさを感じます。

  21世紀に入ってからの大きな変化は、インターネットという情報通信網がインフラの一つになったことでしょう。IoTに代表されるように、全ての機器がネットワークに接続できる時代になりました。

  翻って、20世紀はどのような時代だったのでしょうか。20世紀には、日露戦争に始まり、第一次世界大戦、第二次世界大戦と不幸な戦いがありました。このような時代にあっても、文化・芸術面では大転換が起こりました。1900年にプランクが量子論を提唱し、アインシュンタインは1905年に「特殊相対性理論」、さらに、1915年に「一般相対性論」を発表します。そして、この考えは芸術にも影響を及ぼしブラックやピカソによって創始されたとされるキュビズムへとつながっていきます。また、1900年にはソシュールが言語学の基礎を築き始めます。数学では1900年にヒルベルトが20世紀に解決しなければならない問題を提起しますが、しかし、これらの問題を解決するには新しい理論が必要で、すぐには数学の発展にはつながりませんでした。ようやく、1930年代になってヴェイユらを中心に、これまでの数学を再構築しようと動きだしました。この動きは20世紀の数学にはかりしれない影響を与えたブルバキとなり、数学的構造という概念を生み出します。数学における構造の考えはレヴィ=ストロースによって構造主義へと昇華され、現在でも様々な分野に影響を及ぼしています。

  20世紀は不幸な戦争もありましたが、このようにあらゆる分野で大変革が起こり、新しい理論や考えが創造された時代です。発達した交通機関も情報通信網もなく人と人の交流、情報のやり取りも大変な時代にあって、なぜ、大変革が起こりえたのでしょうか。それとも、今だから分かる大変革なのでしょうか。新年をひかえ、ふと考えてしまいます。

  21世紀は、22世紀に生きる人からみるとどのような時代であったと振り返られるのでしょうか。何かしら人類にとって良いものを遺すことができたらと願うばかりです。

 

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