TEIKAジャーナル

第151回「子どもへの動物愛護教育;千葉県動物愛護セミナーでの講演から考えたこと」(2015.12)

2015/12/19

  千葉県が主催する「千葉県動物愛護セミナー」が、平成27年11月に開催されました。私は、講師として招いて頂き、「子どもへの動物飼育・福祉教育と動物が子どもの発達に与える影響」について話しました。日本のペット飼育の現状から始まり、ライフサイクルとペット、家庭でペットを飼う際の心構えや適性、動物の福祉、動物虐待、人獣共通感染症(脊椎動物から人へ、また人から脊椎動物に感染する病気)、動物飼育が子どもの発達に与える影響と盛りだくさんな内容でした。その中で、私の研究テーマの一つである「動物飼育が子どもの発達に与える影響」では、自身の心理学的研究を織り交ぜながら、ペットへの愛着(特定のペットに対してもつ情愛的きずな)、ペットロス(ペットの喪失による悲しみの心理過程)、動物介在介入(治療や教育場面に動物を介入させたり、環境に取り入れたりすることによって、人に利益や良い影響をもたらすこと)を説明しました。また、ペットへの愛着の6つの側面(1.「日常のふれあいからもたらされる快適さ、楽しさ」、2「ストレスの軽減に役立ったり、気分を落ち着かせたりする」、3「人と人との間をつなぐ」、4「受け入れてくれる」、5「家族の間をつないでくれる」、6自分より弱いものの命を大切にする気持ちが養われる」)を見出したことを紹介しました。さらに、子どもが愛着のある動物を飼育することによって、発達に良い影響がある(自尊心、忍耐力、共感性、役割取得、観察力、責任感等)と考えられることから、「いのちの大切さの教育(生命尊重教育)」への可能性について考察しました。そこでは、子どもの動物への愛着の程度、適性飼育、周囲の大人たちの動物への態度が、いのちの大切さの教育に重要であることが分かりました。

  私は、日ごろから、「動物愛護や動物福祉の推進や、手放された犬や猫の殺処分数をなくしていくにはどうしたら良いか」、「人と動物との快適な共生を実現するにはどうしたら良いかに」ついて考えています。インドの著名な政治家で非暴力の指導者であるガンジーは、「国の偉大さや道徳的発展は、その国の動物の扱い方でわかる」という言葉を残したとされています。そのような道徳的で寛容な社会は、人にも優しい住みやすい社会であるでしょう。子どもが自分より弱い立場の動物を慈しむことは、ゆっくりとしかし確実に他者を思いやる社会を形成する一助となるだろうと考えています。

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