TEIKAジャーナル

第155回「運動の多様性練習」(2016.2)

2016/02/18

  運動の練習をするとき、同じ運動を何度も繰り返して(反復して)練習する方法を一定練習とか恒常練習といいます。例えば、バスケットボールのシュート練習をする際、同じ角度、同じ距離から何十本、何百本と反復して練習する場合です。それに対して、同じ運動を繰り返さず、いろいろな角度や距離から練習する方法を多様性練習とか変動練習といいます。例えば、バスケットボールのシュート練習をする際、いろいろな角度(例えば、右0度、右45度、90度、左45度、左0度)やいろいろな距離から多様な変化をもたせてシュート練習する場合です。

  一般的には、バスケットボールのシュート練習の例でいえば、一定練習の場合は同じ動きを繰り返すことで、1回1回の動きのフィードバックに基づいて動きを修正していくことで、その角度とその距離でのシュートに関していえば、練習をすればするほどシュートが入っていくようになります。

  一方、多様性練習の効果として、以下のようなことがいえます。例えば、バスケットボールの試合で、同じ角度と距離でシュートするのは“フリースロー”だけです。ほかのシュートはほとんどが違う角度と違う角度からのシュートになるはずです。しかも敵をかわしながらのシュートになります。サッカーの場合でも同じことがいえるでしょう。つまり、一定練習のようにいつも同じところからシュート練習しても、試合中、そこから打つシュートはほんのわずかのはずです。そこで、練習中にいろいろな角度や距離から多様な変化をもたせてシュート練習するほうが、試合を想定した場合は効果的になります。特に、シュートする距離についていえば、3ポイントシュートのように遠くから打つシュートとフリースローラインあたりからの近くから打つシュートは、シュート動作の力量を変える調整をすることになるので、いろいろな距離から多様に変化させて練習すると効果的です。

  運動の多様性練習の方法には、3つあります。一つ目は、例えば、2つの動き(A、B)を練習する場合、最初はAだけを数回練習し、次にBを数回練習する(A・A・A・A・A→B・B・B・B・B……)というブロック練習。二つ目は、1つずつの動きを規則的に繰り返して練習する(A・B・A・B・A・B・A・B・A・B……)というシリアル練習。三つ目は2つの動きをランダムに練習する(A・B・A・A・B・A・B・B・A・B……)というランダム練習があります。テニスのストローク練習を例にすると、フォアハンドのストロークを5回、バックハンドのストロークを5回、フォアハンド5回、バックハンド5回……というやり方がブロック練習。フォアハンドのストロークを1回、バックハンドのストローク1回、フォアハンド1回、バックハンド1回……というやり方がシリアル練習、フォアハンドとバックハンドのストロークをランダムに練習するのがランダム練習です。

  この3つの練習方法の有効性については、ブロック練習よりシリアル練習やランダム練習の方が効果的です。ただし、練習中はブロック練習の方がランダム練習より成績がよく、練習後時間をおいてから練習した動きの成績をみるとブロック練習よりランダム練習の方が成績はよくなります。その理由の一つは、ブロック練習は一つの動きだけを何度も練習するのに対して、ランダム練習は1回1回違う動きをしなければならず、その都度どんな動きがいいかなと考えながら練習するので動きの記憶が強固になります。もう一つの理由は、ランダム練習は1回1回の動きが違うので、動きの違いがわかりやすく対比しながら練習するのでそれぞれの動きの記憶が強固になります。

  初心者の指導の場合は、練習の初期段階では上手になることを実感させるためにブロック練習を取り入れ、徐々にシリアル練習、ランダム練習に切り替えて練習するといいでしょう。

 

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