第5回 「ゆっくり急げ」 (2010.6)
2011/01/31
毎日通勤に、つくばエキスプレスを利用しています。そこでいつも気になる風景と出会います。
一つ目は、電車が駅に到着する際に流れるアナウンスです。「今度出発する電車は秋葉原行きです。秋葉原まで先に到着いたします。」 乗降客の気持ちを察してのアナウンスでしょうが、意味がよく分からないアナウンスのように思えます。「先に」とは一体何に対してのことなのでしょうか。何か不安になってきます。
二つ目は、東京人の足の速さです。東京の人は足が速いです。普通に歩いていると、すぐに抜かれてしまいます。通勤時にストップウオッチを持って(これもかなり異様な風景ですが)、足早に歩く人の歩数を調べてみました。すると1分間に平均67歩でした。私はおよそ60歩で歩くので、単純計算で、1分間に7歩、1歩50㎝として、1分間に約3.5mの差がつくことになります。どうしてそんなに急ぐのでしょう。傍から見ていてまた少し不安になってきました。
私たちは、常に見えない何かと競い合うという気持ちを備えているような気がします。小さな頃から、競い合い選別されてきた私たちにとっては、これは切実な悩みなのかもしれません。
でも、そんな時に、私はローマ皇帝アウグストス・カエサルの言葉と言われている「ゆっくり急げ」(ラテン語で Festina lente)という言葉を思い出すようにしています。「ゆっくり急げ」は、急ぐならゆっくりと急ぎなさいなどと言っているのではありません。物事をするのに急いではいけない。もちろん、ぐずぐず、のろのろしていてもいけない。その真ん中、普通のテンポがいいと言うのです。つまり、自分のペースで粛々と進んでいくことが大切なのです。一緒にゆっくり急いでみませんか。