TEIKAジャーナル

第33回 「こびとを見つけに」(2011.5)

2011/05/28


 今年に入ってすぐのこと。小学校1年生の元気な男の子、F君が、最近夢中になっているという本を教えてくれました。タイトルは『こびと大百科』(なばたとしたか作、長崎出版)。本を見せてもらってちょっとびっくり。そこには何とも形容し難い、イマドキの言葉でいえば"キモかわいい"姿をしたこびとたちが描かれていました。最初は『どうしてこれが好きなの?』と思った私ですが、読んでいくうちに思わず一言「面白い!」。
 この本の中では、様々な種類のこびとたちの生態が本物の百科事典さながらに大真面目に(?)描かれています。例えば、コビト綱 植亜目 触頭科 クサマダラ属に分類されるクサマダラオオコビトは、体調15~20cmで、黄色い花の花粉が大好物。脱皮を繰り返して成長します。こうしたこびとたちのくらしが写真とともに紹介されていて、その様子がまた笑えるのです(文章で伝わらないのが残念です)。子ども向けというより大人に受けそうなシュールな内容だと思いましたが、調べてみると(好き嫌いははっきりしそうですが)子どもにも大人にも大人気のようです(『こびとづかん』『みんなのこびと』などの絵本シリーズだけでなく、DVDや人形、トランプなど様々なグッズも発売されているようです)。
 ところで、この本のどこにもこびとは架空の存在だとは書かれていないことに気づき、F君に「こびとって本当にいると思う?」と聞いてみました。するとF君は「そりゃあ、いるでしょ。」と即答。ちょっと意地悪して「でも、見たことないけどなあ。」と言ってみると、F君は少し呆れ顔で「自分が見たことあるものだけが世界の全部じゃないんだよ。見たことのないものだってたくさんあるんだから。」と教えてくれたのでした。
 確かに...。
 F君にとって、こびとたちは、見たことはないけれど信じているサンタクロースのような存在なのかもしれません。
 ちなみに、先のクサマダラオオコビトをおびきよせるには、かごに黄色い花をしきつめてわなをしかけておくのだそうです。F君は目をキラキラ輝かせて「春になってタンポポがたくさん咲いたら、一緒にクサマダラオオコビトを探しに行こうね。」と誘ってくれました。

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