TEIKAジャーナル

第38回「じゃんけん」(2011.7)

2011/07/01

 4歳のAちゃんとBちゃんがじゃんけんをしていましたので、私は二人の様子をみていました。「最初はグー。じゃんけんポン」「Aちゃんのかち」。「最初はグー。じゃんけんポン」「あいこ」。4歳頃になると、じゃんけんの仕方や勝ち負けも判断できるようです。
 そこへ、Aちゃんのお兄さんのC君が「僕も入れて」とやってきました。C君は小学校2年生です。
 3人でじゃんけんが始まりました。「最初はグー。じゃんけんポン」「Bちゃんのかち」。「最初はグー。じゃんけんポン」、Aちゃんは「グー」、Bちゃんは「チョキ」、C君は「パー」。C君は、お兄ちゃんぶりを発揮し、すかさず、「あいこ」。すると、Aちゃんが、怪訝そうな顔をして「誰が?」。C君は何言っているのと不思議そう顔をして、「あいこ」と繰り返しました。
 Aちゃん「ぼくBちゃんに勝っているよ」、Bちゃん「私はC君に勝っているよ」C君「グーとパーとチョキだから、あいこ」
 AちゃんとBちゃんは納得がいかないような顔をしながらも、お兄さんの言うとおりにしています。
 じゃんけんは不思議な仕組みです。チョキはグーに負けるということを「チョキ≦グー」
 と表すると、「グー」「チョキ」「パー」には大小関係を定義できますが、整数などの大小関係とは違うことに気付きます。
 整数には、「a≦bかつb≦cならば、a≦c」(推移律)がなりたちますが、じゃんけんはこの推移律が成り立ちません。
 そこで、4歳のA、Bちゃんが納得できなかった理由として、つぎのようなものを想像してみました。「2つのもの関係は判断できるが、3つ以上の関係は判断できない」
「3つ以上の関係は判断できるが、推移律が成立しないことに矛盾を感じている」
 私は、算数・数学教育に携わっていますので、「あいこ」の理解と、数の理解や算数の理解がどのように関係するか(ひょっとすると無関係かもしれません)に興味がわいてきました。この3人のじゃんけんをヒントとして、少し調べてみたいと思います。

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