TEIKAジャーナル

第13回 「百害あって一利なし」 (2010.9)

2011/02/18

 来月(10月)よりタバコが値上げされます。しかし、世界の先進諸国ではタバコの価格は日本の2~3倍に設定されていますので、世界的にみて日本のタバコの価格はまだまだ安いのが現状です。

 タバコの煙には、先端から立ち上がる副流煙と、喫煙者自身が吸い込み吐き出す煙(主流煙)があります。家庭という環境内で生じたタバコの煙(ETS)を受動的に吸ってしまう受動喫煙(Passive Smoking)は、小さな子どもたちにとっては特に問題となります。

 子どもが家庭内でタバコの煙にさらされることによる悪影響は、多くの研究により明らかにされています。例えば、<喫煙する両親>を持つ赤ちゃんは<喫煙しない両親>をもつ赤ちゃんに比べて肺炎や気管支炎が2倍になること(Colley et al.)や、肺炎や気管支炎で入院した赤ちゃんの母親は喫煙者である可能性が顕著に高い(Harlap et al.)ことなどが示されていますし、「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の発症率は、<喫煙する両親>の場合、<喫煙しない両親>に比べて約4.7倍も高い(厚生労働省)という研究報告もあります。

 その他、小児喘息など肺機能への影響、中耳炎の発症リスク上昇、喘鳴・咳・痰・呼吸困難といった症状の重症化など、多くの健康被害の可能性が報告されています。また、成人後のガン、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳心血管疾患などのリスクが高まることも当然考えられます。

 日本では2003年に「健康増進法」(第25条)が施行され、受動喫煙防止が法律により規定されています。また、受動喫煙防止や分煙に関する条例が多くの地方自治体により制定されています。受動喫煙防止に関する世界的な動向としては、2005年2月に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(WHO FCTC)が発効されています。

 近年では、喫煙をやめたくてもやめられない人は「病気」として扱われ、条件を満たせば保険診療の対象にもされています。喫煙は身体にとって良い影響は何一つありませんし、まわりの人たちの健康へも多大な悪影響を及ぼしています。健康教育の立場からは「百害あって一利なし」と言わざるを得ません。来月よりタバコは1箱あたり100円の値上げがされますが、これを機にタバコを吸う人がさらに減少することを願ってやみません。

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