TEIKAジャーナル

第67回「スクールソーシャルワーカーを知っていますか?」(2012.6)

2012/06/17

   皆さんの周囲で、いじめや不登校、暴力行為などを見聞きしたことはありませんか?これら問題行動を引き起こしているのには様々な要因が考えられますが、1995(平成7)年度から、文部科学省では、学校におけるカウンセリング(相談)の充実を図ることを目的として、学校外の心理専門職を学校に派遣を始め、2001(平成13)年度からは、すべての子どもがスクールカウンセラー(以下、SC)に相談できる機会を設けていくため「スクールカウンセラー活用事業」を展開しています。

   しかし、社会情勢の変化で、子どもの心の問題と共に、児童虐待などの家庭の問題、友人関係、地域、学校など、子どもの置かれている環境が問題視されてきました。環境の問題は複雑に絡み合っているため学校だけでは解決が困難なことも多く、学校以外の関係機関等と連携することが必要になってきました。そこで新たに注目されているのが、スクールソーシャルワーカー(以下、SSW)です。

   スクールソーシャルワークは、20世紀初頭にアメリカで誕生したシステムで、活動の特徴は、学校を拠点として福祉(ソーシャルワーク)的なアプローチで、子どもたちのQOL(クオリテイーオブライフ・生活の質)を高めるサポートをすることです。文部科学省では、教育の分野だけでなく、社会福祉の専門的な知識・技能をもった社会福祉士や精神保健福祉士などを学校に配置し、家庭や学校、友人関係、地域社会など子どもの置かれている環境に働きかけて支援を行う「スクールソーシャルワーカー事業」を、2008(平成20)年度から展開しています。

   SSWは、「ささえる」「つなぐ」「つくる」を合い言葉に、子どもたちの元気のでない状況、気になる状況の原因を改善するために、子どもを取り巻いている状況の関係性を見立て、大人と子ども、それぞれの視点で話をよく聞きます。そして、教員や保護者と協働して、複雑な問題などを複数の機関につないだり調整して、解決へ導きます。
   SCは心の専門家で、SSWは福祉の専門家です。SCは、問題は「個人の内面」、つまり、心理にあると考え、心理的な葛藤を治療行為で問題解決しようとする「心理カウンセリング」という方法で解決に導きます。 SSWは、問題は「個人の環境の不適合」だと考えて、個人と環境の両方を視野に入れ、状況に応じて、それらの間にある関係を調整したり仲介・連携等を行います。

   SSWはまだ導入が始まったばかりで基本的な理念や活動の内容が統一されていませんが、「無縁社会」と言われている現代の社会の中で、学校を基盤として支え合うネットワークを構築する上で、SSWの必要性は高まっていくものと考えます。

 

 

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