第115回「物語りのつづき」(2014.5)
2014/05/27
事情で中断していた研究活動を再開するめどが立ったとき、本学の教員募集が目に入りました。採用試験や面接は、何度受けてもとても緊張します。はらはら、どきどきしながら数ヶ月の「就職活動」を経て、この4月、本学に着任しました。
人生の道行きを考えるキャリアの理論に、プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance; 計画された偶然)という考え方があります。めざすべき将来から逆算して計画的にキャリアを組み立てる従来の理論に対して、個人のキャリアの8割は予期せぬ偶然によって成り立っている、とするものです。
強い意志の力で、偶然すら味方につけて、夢見た目標を現実のものにしてきた人びとは確かにいます。けれどもわたし自身の人生も、ふり返れば「予期せぬ偶然」をたどってきた道のりでした。人生の中で、これほど何度も採用試験や面接を受けることになろうとは、また、大学で教職に就くことになろうとは、学生時代には思いもよらぬことでした。
しかし、プランド・ハップンスタンス理論は、人間を運命に翻弄されるだけの存在と見なしているわけではありません。「予期せぬ偶然」に遭遇したとき、それをどうとらえ、次にどのような一歩を刻むかは、その人自身の主体性や努力にかかっていると考えるのです。
わたしが、人生の波乱万丈の中で「予期せぬ偶然」にくり返し見舞われたとき、次の一歩を支えてきた行く手の灯りは、「教育」に携わりたいという思いでした。この「教育」は学校教育に限定されるものではありません。人が育ち、育てられて自己を形成していく、その過程を見守り支える、広い意味での「教育」の仕事に就きたいと思ってきました。
こうしてたどり着いた本学で、わたしの物語りのつづきがはじまります。どのようなお話になるのか、とても楽しみにしています。