TEIKAジャーナル

【作業療法学科】オリンピック選手の作業を考える

2021/08/01

作業療法学科の澤田です。
コロナの感染者数が増える中、オリンピックが粛々と進んでいますね。
久々に、作業療法における「作業」についてお話してみたいと思います。

作業療法理論の授業において、今回の東京オリンピックに参加している「池江瑠花子」選手の作業について取り上げています。
池江選手は、東京オリンピックを目指す中、白血病を患ったことはニュースなどを通してご存じではないでしょうか。もし、昨年、予定通りに東京オリンピックが開催されていたら、日本代表になることは難しかったかもしれませんが、一年延期となった先日の東京オリンピックでは、日本代表として出場されていました。

さて、みなさんは、今、病気で泳げなくなったらどうでしょうか?
水泳部の方や、泳ぐことが大好きな方の話は別ですが、今、みなさんが病気で泳げなくなっても差ほど困らないと思います。
池江選手にとって水泳は「価値」がある作業(価値の高い)であるといえます。一方、みなさんにとっては価値が低い作業であるといえます。このように、人によって作業の「価値」は違うものです。

また、今回の東京オリンピックでは、池江選手は、金メダルを取る泳ぎをすることができませんでした。おそらく、今回の泳ぎについて池江選手は(予想ですのでわかりませんが)「まだまだ」だと感じているのではないでしょうか? 一方で、私たちから見たら、とても速い泳ぎを見せた池江選手の能力からはすごさを感じます。もし、私たちがあのくらい泳げたら…。
 つまり、池江選手の自分の能力の認識と、他者の能力の認識では差があります。同じ作業を同じように行っても、評価をする人によって、能力の認識に差が出るのです。また、同じレベルができても、人によって自己認識は違うのです。

さらに、池江選手とともに泳いだ選手の出身地(国)を見ると、あまりアフリカの国々の選手がいません。一方で、今後行われる陸上競技にはアフリカ出身の選手が多く出場されるでしょう。これは、身体的な特徴の差で競技を選んでいるだけでなく、文化の影響も大きく受けていると考えられます。泳げることが重要な文化、速く、あるいは、長距離歩ける力が重要な文化がその背景にあるのでしょう。逆に言えば、そういった文化背景に合わせて、身体的機能も特化してきたともいえるかもしれません。このように、作業は文化にも大きく影響を受けます。

以上のように、オリンピックやその選手を通して、「作業」について考えてみると、少し作業を理解しやすくなるのではないのでしょうか。
 
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