TEIKAジャーナル

【プレスリリース】生命科学科 髙谷光教授と東京理科大学、東京都立大学、JASRIの共同研究について

2023/06/29

 東京都立大学大学院理学研究科の山添誠司教授、藤木裕宇(大学院生)、松山知樹(大学院生)、吉川聡一助教、平山純特任助教、中谷直輝教授、帝京科学大学の高谷光教授、JASRI の安田伸広研究員、新田清文研究員、東京理科大学の根岸雄一教授らの研究グループは、有機配位子で保護されたカチオン性の合金クラスターに対し、サイズの異なるアニオン性クラスターを用いることでクラスターの配列を制御できること、配列制御によってこれまで困難であった合金クラスターの構造異性化を誘起させることに成功しました。

 これまで王冠状(クラウン構造)に金原子が並んだカチオン性[Au9(PPh3)8]3+は[PMo12O40]3-とイオン結晶を作るとクラウン構造を保ちますが、硝酸イオン([NO3]-)や塩素イオン(Cl-)と結晶を作ると金原子の配置が蝶々様(バタフライ構造)の準安定構造に変化すること(構造異性化と呼ぶ)が知られています。一方、[Au9(PPh3)8]3+の中心の金原子を Pd や Pt に置換したクラウン構造の合金クラスター[MtAu8(PPh3)8]2+(Mt = Pd, Pt)ではアニオン性クラスターと結晶を作っても構造異性化が起こらないことがわかっていました。

 しかし、今回の研究で、[PMo12O40]3-よりもクラスターサイズの小さい[Mi6O19]2-(Mi = Mo, W)を用いて結晶を作ると、[MtAu8(PPh3)8]2+と[Mi6O19]2-がこれまでの結晶とは異なる配列(岩塩型構造)になるだけでなく、構造異性化を誘起し、準安定なバタフライ構造の[MtAu8(PPh3)8]2+を安定化・合成できることを発見しました。構造異性化により光学特性・電子状態が変化するだけでなく、結晶の再溶解によりクラウン構造とバタフライ構造を可逆的に変化させられることから、光学材料や触媒への応用が期待できます。
 
 本研究成果は、2023 年 6 月 20 日付けで「Communications Chemistry」に掲載されました。


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