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第84回「道徳公開授業」(2012.12)

教授 村野 芳男

教授 	村野 芳男

  11月の中旬に、地元の公立小学校(私の母校)の道徳と社会科の授業を参観する機会を得た。

  東京都教育委員会は、平成10年から道徳の授業公開を地区ごとに実施する施策を行ってきた。ねらいは、道徳教育の推進及び道徳の授業の活性化と開かれた学校教育の推進にある(都教育委員会HP)。参観者のほとんどは保護者であり、私のような地域住民の立場からの参観者が他にいたのかは定かではない。日頃、閉ざされた校門と「防犯カメラ設置」の表示を横目に学校の前を歩いているので、当日、保護者でもない私がいとも簡単に教室までたどり着いたのには驚いた。学校を地域へ開く一環としての「授業公開」でもあり、特別の措置だったのだと思う。

  やがて、道徳の授業が始まった。全学級が授業公開する中で私は、5年生の「世界の食事」の授業に注目し参観した。学習指導要領の内容項目では「国際理解と親善」に該当する。

  授業は、導入で「どうして、食事は必要?」の問いかけから始まり、1枚の食事場面の写真を提示した。「これはどこの国?」の問いに、「日本」という声が飛ぶ。「茶碗や箸を使っている」の声が続く。

子ども達の反応を確かめ、地図帳で日本の位置を確認させ、2枚目の写真を提示する。「手で食べている」などの反応が出る。さらに、3枚目、4枚目の写真を提示し、食事場面の特色を指摘させてゆく。日本・サウジアラビア・イギリス・インドの写真を見た後、教師は地図帳でその位置を探させた。地図帳で国の位置を探す児童に、「日本に近い国は?」「日本から遠い国は?」などの問いかけも忘れない。私は、「道徳」の授業で地図帳を使う担任教師に共感を覚えた。「国際理解と親善」の内容なのだから当然と言われればそれまでである。しかし、様々な指導場面で、地図帳に目を通すことを積み重ねてゆくならば、児童の空間認識は無理なく発達していくに違いない。大学生の空間認識のあやふやさを実感している私は、「我が意を得た」心境であった。

  この後、教師は、ワークシートと4枚の写真が掲載されている道徳の副読本を配布し、「違うところ、同じところ」を5つ以上書き出しなさいと指示した。授業は、ワークシートに記入した内容の発表へと進む。教師と児童、児童同士のやりとりのなかで、食事場面に見られる異文化に気づいてゆく。一例を挙げると、児童の「サウジアラビアと日本の違いは手で食べている」の発表を受けて、「どっちの手?」と問い返す。すかさず児童から「右手」「左手は汚い」などの反応が返る。このような「違い」がたくさん指摘された後、教師の、「違いは、どこから?」の問いに、「人の違い」「文化の違い」「環境の違い」などの反応が出る。教師の「さっき、右手で食べると○○君が言った」の指摘に、児童は「左手は汚い」と反応、教師は「風習や考え方は国によって違うのだね」と応じ、違いは「国の文化」「環境・風習」「考え方」と板書する。同様に、「同じところ」が発表され、最後に「なぜ、食事は必要か?」という導入と同じ発問をする。児童からは、「病気にならないように」「楽しいから」「命をつなぐ」などの反応があり、教師は①生きるため、②楽しく過ごす(人とのつながり)、③命をいただくと整理して板書する。③の「命をいただく」について、教師と児童との次のようなやりとりが続く。


      教師「野菜や肉から何をもらっているの」

      児童「栄養素」、

      教師「肉って元々なに?」

      児童「生き物」

      教師「命をもらって食べているんだね」

      教師「肉を食べてはいけない国もある、ここはどこ?」

      児童「サウジアラビア」

      教師「サウジアラビアでは豚肉は食べないし、お酒も飲まないの」・・・

 

  学習指導案には、授業の終末として、「教師の説話を聞く」とある。道徳の授業のお決まりの感があるが、授業時間が過ぎ、説話をせずに授業を終えた。しかし、児童は授業を通して、世界には様々な食文化があることを学んだし、自分達と異なる文化を尊重するまで辿り着いたかどうかはともかく、異文化を容認する姿勢は見られたように思う。

  一度だけの参観で、授業公開制度を評価することはもちろんできない。しかし、一地域住民にすぎない私が、自由に授業参観できるということは評価したい。学校を開くということは、運動会や学芸会などの学校行事の公開に止まらず、普段着の教育を公開することであっても良い。安全対策や学習指導案の作成など教師の負担は増えるが、学校に対する地域の理解を進め、地域が学校を支えるきっかけになるのではないかと思う。所用があって、授業後の協議には出席できなかったが、次の機会には参加してみたい。







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