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第106回「スカーフ体験記」 (2013.12)

特任助教 田口 直子

特任助教 田口 直子

  7年ほど前のことです。子どもの発達についてワークショップをイランで行うことになり、お手伝いにテヘランまで出かけたことがあります。イランに行くのは初めてでした。せっかく呼んで下さる先方に失礼の無いようにしようと、最も気を使ったのは服装です。ムスリム(イスラム教徒)の方々は、女性が肌を見せません。しかしその「見せない度合い」はハードムスリム、ソフトムスリム、そして年齢や地方によってまちまちです。イランの現地情報に触れることは多くないので、イランでどのぐらい肌を見せてよいのかはイメージすることが難しいものでした。よくよく関係者の方にお話を伺いわかったのは大変驚くべき内容で、イランの国内では外国人や訪問者でも、そしてそれがたとえホテルの建物の中でも、自室以外では女性は絶対にスカーフを外してはいけないということでした。法律により公共の場で女性がスカーフをはずすことが禁じられているのです。

  テヘランについて飛行機から降りる間際には、私たち日本人を含むすべての女性が「さささっ」とスカーフを装着しました。そして、普段したことのないヘジャブ姿で街を歩くことになります。異国情緒・・・などと写真で見るのと体験的学習は大違いです。40度近い外気温の中、あつくてあつくてあつくてあつくて文字通り「地獄の苦しみ」です。心底スカーフを憎らしく思いました。

その後ですが、私は本当におっちょこちょいで、ワークショップ本番中、話しの途中にスカーフがパランと落ちてしまうという事件がありました。思わず日本語で「すみません」とあやまり、大焦りで巻きなおしましたが、その場面とその後に多くのイランの参加  女性から、

「気にする必要はない。ばかばかしい法律なのだ」

  と強い調子で言われ、私は目からうろこでした。そう、同じ人間なのですから。こんなにあつくてあつくてかなわないものを喜んでつける人はいないでしょう。

  イラン訪問の帰路、英語によるイマージョン教育を行っている学校を見学する為、トルコに寄りました。トルコもムスリムが多い国ですが、トルコではスカーフは法律で義務付けられていません。英語を教えている知人はトルコ人でもスカーフをせず、私たちと同じような服装をしていました。しかしそれにはまた別の難しさがあり、トルコではスカーフを巻いていないことで生意気と痴漢をされたり暴行されたりする事件が後を断たないそうです。

  私たち日本の女性が持っている自由に感謝しつつ、自分が先進国に住む一女性として果たすべき役割を担えているかは甚だ疑問であるとおおいに反省したイラン、トルコ紀行でした。



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