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第122回「表現者としての保育者」(2014.8)

准教授 林 友子

准教授 林 友子

  8月初旬をすぎ、幼稚園や保育所、施設等へ実習に行っている学生の様子を見て、助言や指導をするために、実習先を訪問する巡回訪問指導が始まりました。

  学生は、実習前に事前指導を受け、実習の意義や目的、心構えとともに乳幼児の発達、その理解、保育やふさわしい環境等について学びます。また、日々の子どもの姿や保育の様子等を記録する実習日誌、実際に子どもの前に立って指導を行う際の指導案等の書き方なども習得し、実習に臨みます。実習に臨む学生が心身共に健やかな状態で子どもたちとふれあい、現場の先生方から多くの学びを得てきてほしいと願っています。

  巡回訪問指導で実習先へ赴くと、多くの学生は、これまでの授業の中では見せることのなかった表情や姿勢を見せ、驚かされることが度々です。実際に子どもたちとふれあえる環境に置かれれば、子どもを見守る優しいまなざしや子どもとのふれあいを楽しむ満面の笑顔を見せることは当然と言えば当然なのかもしれません。

  Aさんに対する私の印象は、授業の中では真面目で一生懸命、向上心も高く感じられます。しかし、一方で、表情が硬く、笑顔を見たことがありません。私の授業が硬いのか…と悩みもするのですが、“子どもの前に立って大丈夫かしら?”と、心配でもありました。

  そんなAさんの実習先へ伺うことになりました。

  Aさんの実習園は、自然環境に恵まれ、広々とした真新しい園舎いっぱいに子どもたちの元気な声が響いていました。さて、そこでのAさんは…。保育室に一歩足を踏み入れるなり、なんとも柔和な表情で、はりのある元気な声と機敏な動きで子どもたちにかかわり、子どもたちとのふれあいを存分に楽しんでいる姿が目に入ってきたのです。Aさんに子どもたちも魅力を感じるのでしょう、Aさんを慕う様子が見てとれました。“な~んだ。良かった”と、私の心配はあっという間に杞憂に終わりました。そして、Aさんに「笑顔がとっても素敵!楽しそうね。大学ではちょっと硬い感じがしてたので驚いた~」と、素直な感想を漏らしてしまいました。すると、Aさんは「とっても楽しいです。子どもの前では意識して明るく、自分を豊かに表現するよう心がけています。」と、話したのでした。Aさんは、子どもの前では意識的に明るく、豊かな表現ができるように努めていたのです。

  私は、保育者にはある意味、俳優のような表現者としての素養が必要だと考えています。子どもの喜びや驚きに共感する時、悲しみやつまらなさに心を寄せる時等々、保育者の心情や思いが子どもに伝わるよう表現豊かであることは大切だと思うからです。また、表情豊かに歌ったり、何度も絵本を読みこんでその絵本の魅力を捉えて読み聞かせに臨んだり…保育者自身がその遊びや活動の面白さ、楽しさを感じ、子どもたちに伝えることは大変重要だと思います。そんなことを考えると、表現者としての保育者を意識して子どもの前に立つAさんの心がけは、とても立派に思えました。

  Aさんのことを通して、私は大学では学生のほんの一面しか見ていないことにも気付かされました。巡回訪問指導を通して、一人一人の学生がもつ良さや可能性を数多く見付けていきたいと思っています。



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