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第140回「絵が嫌いということ」から(2015.6)

講師 平野 英史

講師 平野 英史

  図工の授業をしていると、「絵を描くことが嫌い」という学生が多いことに気がつきます。そして、「写実的に描くことが苦手」であるということが一番多い理由のようです。この原因には、いろいろなことが関連していると思いますが、小学校などで、写実的に絵を描く方法を、本人が必要だと感じる時に学べなかったということをあげることができます。

 

  人は、生まれてから死ぬまでいろいろな活動や経験することで成長します。運動のことで言えば、手足を動かすこと、寝返りをうつこと、お座りをすること、つかまって立つこと、歩くこと、走ること、跳ぶこと・・・・などがあります。子どもの描く絵にも、例外はありますが、多くの人が経験していく、同じような変化の過程があります。

 

  絵の苦手意識は、絵が発達する過程の中でも、特に、小学校3年生から5年生頃に見られる写実的に絵が描きたくなる(または描かなければならなくなる)段階に起る場合が多いです。

 

  写実的に描きたい時に、運よく、まわりの人(親・教師・友達・兄弟まど)から描く方法(透視図法・彩色方法・陰影のつけ方など)をタイミングよく助けられると、多くの場合、絵が好きになるようです。逆に、この時期に嫌な経験をすると苦手意識が芽生えてしまいます。

 

  しかし、写実的に描きたいと思う(身の回りを立体的に捉えられる)時期は、人それぞれに違います。そのため、図工の授業の中で一斉指導によって方法を教えられても、描きたいと思わない時期であればチンプンカンプンになってしまいます。

 

  私自身が、写実的な絵を克服したきっかけは、小学校の算数(または理科?)の時間に工作用紙で立方体や円すいなどを作った授業でした。平面的なもの(展開図など)から、立体的なものを製作したことで、二次元と三次元との間にあった造形上のつながりに気がついた瞬間でした。図を読み書きする能力を契機としたわけです。

 

  写実的な絵のことに限らず、生活する中に存在する様々な問題には、このような苦手意識の克服を出発点とすることがあるように思います。運よく、まわりの人に助けられれば良いのですが、そうではない場合も多いということは誰もが知るところです。知識や技術を習得することの前に、苦手意識をどのように克服するかが、学ぶことにとって重要な要素であるといつも考えています。



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