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第154回「形となり実となる年に...」(2016.1)

准教授 林 友子

准教授 林 友子

  2016年、新しい年を迎えました。

  今年は、申年(さるどし)。中でも「丙申(ひのえさる)」と言うのだそうです。「丙午(ひのえうま)」は、その迷信からよく知られるところですが、「丙申」という言葉は初めて耳にしました。なんでも、「十二支」と「十干」(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)を組み合わせると、干支は60種類あるとのこと。つまり60年で干支を一巡することになり、そこから『還暦』が生まれたのだそうです。従って「丙申」も60年ぶりということになります。

「丙申」の年はどんな年になるのでしょう。調べてみますと、「丙」には形が明らかになってくる頃という意味があり、「申」は「呻く(うめく)」、果実が成熟していって、固まっていく状態を表すのだそうです。これらを考え併せると、何かが形となり、固まっていく年となるのではないか…とありました。一つの見方とはいえ、人それぞれに育まれるものや目指すものが、何か形となり実となっていく年になるといいなと思います。

 

  先日ある幼稚園で、年中児の遊びの様子を目にする機会を得ました。

  3人の女児が、園庭でケーキ屋さんを開こうと、ベンチやテーブルをもってきてお店を作っています。出来上がると、A子「私お姉ちゃんね」B子「私も。皆、お姉ちゃんになりたいんじゃない?」A子「お姉ちゃんたくさんいてもいいんだよ」C子「私、お母さん。…あっ、やっぱりお父さん」B子「お母さん、どうする?」C子「いなくていいんじゃない?」B子「じゃあ、死んだことね」A子「散歩言ってくる」(と言って、ケーキ作りのためのカップやスプーンなどを取りに行く)C子は、左右の手に縄跳びを一本ずつ持っている。2本の持ち手を見せながら「この子たちの名前どうする?」とB子に尋ねる。B子が首を傾げるそばから、C子「はるかとなおみにしよう」B子「なおみ?私のお母さんと一緒だ」とクスッと笑う。C子は、縄跳び2本をずるずると引きずりながらケーキ屋の周りを歩く。B子はその様子を見ながら「ねえねえ、犬と猫休ませてあげたら…」(私はここではじめて縄跳びが犬と猫だということを知る)B子「やっぱり犬の“なおみちゃん”はやめたら…」C子「えっ何がいいの?」B子「ももちゃんがいいんじゃない?」C子「ももちゃん?いいねぇ」

  この後、ケーキ作りの道具が持ち込まれてケーキづくりが始まります。花や葉をあしらった素敵なケーキがいくつもできて、ケーキ屋ごっこは1時間以上も続きました。

  年中(4歳)の今頃になると、子ども同士の会話も盛んになり、互いのイメージをすり合わせながら継続して遊べるようになります。ここでは互いの考えを言葉で伝え合い、それぞれの考えを受け止めて遊ぶ育ちがみられました。そして、素敵だなと思ったのは、B子の思いの出し方です。はじめ、お母さんの存在は架空のものとして“死んだこと”にしています。転じて、“なおみちゃん”という言葉が出てきてからは、俄然もやもやした気持ちになったのではないでしょうか。自分のお母さんが犬にされてしまうような…。でも、その思いを「犬の“なおみちゃん”はやめたら…」とやんわりC子に伝えるB子。お母さん思いの優しさを愛おしく感じた一瞬でした。

 

  子どもたちは遊びを通して、表現力や思考力、創造力など、様々な力を身に付けていきます。友達との関係性が深まると、互いの良さを認め合いながら協同して物事に取り組む力も育まれます。それぞれの年齢の子どもたちが、それぞれの育ちにふさわしい豊かな環境の中で“遊び込む”ことを通して、こうした力が形となり実となっていきますように…と願っています。



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