TEIKAジャーナル

第21回 「私の草の根活動」 (2010.12)

2011/03/08

 8月10日、本年度前期の授業を終え、急いで中国に発った。JICA(日本国際協力機構)「河北省における自閉症児教育教員養成支援プロジェクト」のプロジェクトマネージャーとして、実家のある北京の避暑地、河北省秦皇市で中国大陸の教員を中心に自閉症児療育の教員研修を行った。この計画は3年間がかり、やっと実施するようになったが、昨年新型インフルエンザ流行のため、1年延期することになってしまった。今年、とうとう実行することになって、私も日本からの大先生たちもほっとしていた。

  中国では、自閉症(Autism)を「孤独症」と訳してきたが,最近自閉症と呼ぶことが多くなっている。自閉症に関する最初の症例報告は,1982年に南京児童心理衛生研究センターの陶国泰教授が自閉症児と最初に診断したことである。中国には13億人口の中に8,296万人(6.34%)の障害者がいる。精神障害として2008年に認められた自閉症児者の人数が明記されていないが、日本自閉症児協会が発行された『自閉症の手引き』に自閉症の発病率で計算すれば、中国では、自閉症スペクトラムの障害児者は1,300万人以上(うち典型的な自閉症児者は390万人以上)となる。このように膨大な自閉症児者を有しながらも、これまで中国における自閉症児の早期療育・就学前教育は民間の療育施設に全てを頼っているのが現状であった。自閉症児の研究や療育・福祉の進展が緩慢であり、現在の状況は日本や欧米先進国に比較して大きく立ち遅れている。

  14年間中国の自閉症療育を研究してきた私が、4年前から中国全土における自閉症児の家族のストレスが高く、民間自閉症児療育施設の開設が急増(2002年の10数ヵ所から2004年の50ヵ所に増加し、現在540ヵ所に増えた)したことにおいて、日本からの支援を求めることにした。幸せなことに、佐々木正美先生(川崎医療福祉大学)、太田昌孝先生(心の発達研究所)、望月昭先生(立命館大学)の協力を得て、定員40人より大幅増えた 60以上の受講生と一緒にハードスケジュールで、自閉症児療育に関わる主な療育方法のTEACCHプログラムやABA、太田ステージについて勉強した。一日2時間しか寝ていない日もあったが、充実な時間を過ごせた。受講生の熱意から自閉症児教育機関に教師の専門性の養成、公立自閉症児教育機関の設立、民間療育機関への援助は日本からの支えが強く求められていることを感じていた。

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