TEIKAジャーナル

第121回「中国の幼児教育」(2014.8)

2014/08/11

  先週、中国の就学支援システムを調査するために、中国の北方地方を中心に現地の幼稚園を訪れました。夏休みがなく、賑やかな幼稚園の中、暑さに負けず一所懸命勉強している園児たちの姿は、現在の中国の幼児教育の縮図だと思われます。今回の調査に、今年3月の春休みの南方地方における調査結果を加え、中国における幼児教育のシステムと現状を簡単に紹介しながら日本の幼児教育と比較し、論文にまとめようと考えています。

  中国の近年の幼児教育は、2001年に制定された「幼稚園教育指導綱要」に基づいて、各地方でそれぞれの条例を作り、「健康」「社会」「科学」「芸術」「言語」の5領域を主に教育します。中国の「幼児教育」とは3歳から6歳児の幼稚園教育を意味します(0歳から3歳児の教育は「早期教育」と言われています)。

  幼稚園の基準も規模も様々です。基準が高い幼稚園(A級あるいは一級幼稚園)は、ほぼ100%の先生が幼稚園教師資格証書を持っています。そして日本と大きく違うのは幼稚園の規模です。見学させていただいた8つの幼稚園には、最少250名、最多の幼稚園には460名の児童が在籍していました。しかし、どの地方でもクラスの規模は小さく、年少クラスで20人以下、年中クラスで25人以下、年長クラスで30人以下でした。さらに、どのクラスも「二師一保」(担任2名と保育員1名)でした。2名の担任を用意するのは、児童の在園時間が長いためです。ほとんどの幼稚園は午前7時30分から午後の6時までです。そのために担任の先生(二師)が早番と遅番のローテーションになっているのです。保育員(一保)は必ずしも幼稚園教諭の資格を持っているわけではなく、保育員主に児童の生活の面倒を見ています。

  もっと不思議なのは卒園時期です。園によって、卒園時期が全く違っています。公立の幼稚園は夏休みがあるために、卒園時期が早く、7月中旬までです。しかし、私立幼稚園は制約がないために、小学校の教育レベルに合わせ、8月30日に卒園する幼稚園もあります。公立幼稚園を卒園した児童の場合、私立幼稚園に短期入園し、就学前教育を受けるケースも少なくありません。

  幼児教育カリキュラムなどについて、整理しながら論文で詳しく紹介させていただきたいと思っておりますが、ここで、中国の幼稚園を見学したときにまず実感し、良いと思ったのは、どの幼稚園でも1日3回の給食が提供されていたことです。共働きが当たり前の中国の現状に相応しいシステムでした。日本の女性の社会進出にとっても、よい参考資料になるのではないかと思います。

 

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