TEIKAジャーナル

第124回「運動能力-運動体力、運動技能、運動技術」(2014.9)

2014/09/27

  学校の体育等で運動が上手な子どもとあまり上手でない子どもがいます。この運動が上手なのかあまり上手でないのかを左右する要因が運動能力です。運動能力には、筋力、持久力、瞬発力、全身持久力といったエネルギーを生産する能力としての運動体力と知覚を手がかりに状況判断、意思決定、予測などの過程をとおして運動をコントロールする能力としての運動技能の2つがあります。そして、運動体力と運動技能を高めることで運動が上手に行えるようになります。

  すべての運動は筋肉を動かすためにエネルギーを生産・消費するので、運動体力はどの運動にも共通する一般性の高い能力です。一方、運動技能は、例えばサッカーが上手だからといってテニスが上手にできるかといったらそうではないように、運動種目やポジション等によって知覚される環境や状況が異なり、それぞれに特有の知覚を手がかりに運動をコントロールする必要があるので特殊性の高い能力といえます。

  そして、運動種目によって、運動体力の比重が高い運動(例えば、重量挙げなど)、運動技能の比重が高い運動(例えば、ゴルフのパットなど)、運動体力と運動技能が同じくらいの比重の運動があり、2つの能力をどのように高めていくかが重要になります。さらに、同じ運動種目やポジションでも体力派の選手と技能派の選手がおり、個人差を考慮した能力の向上を図っていく必要があります。

  ここで、運動技能と同じように使われている用語に運動技術があります。運動技術とは、簡単に言うと、運動のやり方のことです。運動を上手に行うには、上手に行うための正しいやり方があり、人から指導されたり、本を読んだり、動画を見たり聞いたりして、“こういうふうにやればいいんだ”といったように知識として身につけていきます。この運動技術は、運動を実施する環境や使用する用具などの改良によって発展していきます。陸上競技で使われるトラックは、昔、土でしたが、今ではタータンにかわり、使用するスパイクの改良によって“走り方”が発展していきました。このように新しい運動技術が、これからも開発されていくことが期待されます。

  運動には“わかる”レベルと“できる”レベルとがあります。“わかる”レベルとは、この運動をするには、「こうやって、ああやって、こうすればこういうふうにできるんだ」といったように運動のやり方(あるいは正しいやり方)を理解しているレベルのことをさします。つまり、運動技術は“わかる”というかたちで身についていきます。ですから、運動技術は人に伝達が可能です。それに対して、運動技能は知覚を手がかりに状況判断、意思決定、予測などの過程をとおして運動をコントロールする能力ですから、“できる”というかたちで身についていきます。よく、頭では“わかっている”のに“できない”ことがありますが、これは、運動技術は身についているが運動技能が身についていないことになります。運動技術を身につけて、運動技能を向上させるために練習をするわけです。

 

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