TEIKAジャーナル

第123回「幼稚園、保育園」 (2014.9)

2014/09/26

  最近は幼保一元化のニュースのせいか、以前以上に「それで、幼稚園と保育園はどう違うの?」という質問を保育関係者でない方からもたいへん多く受けます。

  これはどちらが文部科学省の管轄、どちらが厚生労働省の管轄というようなことをたずねられているのではありません。 実際の保育園と幼稚園のありようが、どのように異なっていると考えるか?というご質問です。

  児童教育学科では、8月、9月に施設、保育園、幼稚園の実習がありました。教員は学生の実習先に巡回指導訪問をさせて頂きます。わが国が幼稚園と保育園を一体化させ、「認定こども園」化を進めている今、保育園、幼稚園の巡回指導訪問をさせて頂く中で様々な園を拝見し、少々新鮮なほど「やっぱり保育園と幼稚園は違うなぁ…」と実感、体感しました。

  ひらたく言ってしまうとみもふたもない話になってしまいますが、おしなべて幼稚園の子どもは落ち着いています。保育園の子どもの倍の人数がいてもしっかりと話を聞くことができています。落 ち着きがいまひとつな子どもはいますが、数が違います。

  昨今、日本の子どもたちの置かれている状況が、十分に遊ぶこともできない環境であることが多く、深刻であるということはよく耳にします。

 私が発達支援センターで相談の仕事をしているときにも「多動」を疑われて相談に来所する子どもがたくさんいましたが、そのうちの少なくない数の子どもが、遊びの中で肉体的にも精神的にも十分に「発散」できる時間を持たせるという環境の調整だけで改善しました。 欲求不満なのは大人だけではありません。慢性的に「発散不足」の子どもたちが多く、一種社会病の様相です。この現実にはもう少し目を向けていいのではないかと危機感を持ちます。

  保育園がよい、幼稚園がよいなどという、昔ながらの都市伝説やゴシップのようなうわさに振り回されることは不毛です。

  何歳くらいの子どもには何人くらいの集団で何時間くらいどのような保育・幼児教育を受けることが理想なのか、当事者意識を持ってシミレーションしてみていただきたい。

 年少の子どもにとって集団にいる時間は何時間が理想でしょうか?5時間なのか8時間なのか10時間なのか?

  それぞれの子どもの発達に応じた適切な環境を与えることこそが、育児であり保育です。大人のニーズ中心、大人のニーズにこたえる形でのみ保育園、幼稚園を子ども園 に変化させていったとき、それは随分とこどもにとってよい環境からはかけ離れていってしまうと深く心配をしています。

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