TEIKAジャーナル

【作業療法学科】機織りを利用した作業療法

2020/07/10

【作業療法学科】
機織りを利用した作業療法

作業療法学科の大関です。
もし私が、作業療法室を開設する時に手工芸は1つしか買えませんと言われたら、迷わず機織り機を購入します。機織りは、あらゆる感覚情報を利用して行い、かつ、運動と精神のコントロールも必要です。そして、計測器などでは図ることが困難な「作業の質」を織り目という目に見える形で表します。力加減の時系列的なブレ具合、集中力、身体の安定力など様々な能力が織り目に現れます。患者様も、あなたは「集中力が低い」と言われるだけでは納得できなくても、作品で集中力の低さを自己評価できますし、訓練効果もやはり織り目で確認できます。また、多くの工程間節目があり、多彩な展開も可能です。例えば、工夫して筋トレのトレーニング器具にもなります。触覚の訓練もできますし、計算能力の練習にも使えます。
しかし、最近の診療報酬改定で、準備に時間がかかる機織りは利用がしにくくなっていしまいました。機織りは、人類の日常の生活史の中でも古くから利用され続けられている機械です、今着ている皆さんの服も布である以上現在も自動ですが機織り機で織られています。また、利用されなくなった理由として、生活様式の変化で手織りが馴染みのないものになったこともあります。しかし、作業は以前も書いたように、それ自体が目的となる作業と、手段として使う作業があります。手織り技術を生業として習得するではなく、上述したようにあらゆる要素を治療に利用しているのです。逆に現代のオートメーション化された作業の多くは、「スイッチと結果」という因果となっており、作業療法としては利用しにくいところがあります。個人的には、機織りでアンティークロマンを感じながら、心や
体のリハビリするのも作業療法らしくて良いなと思ています。
 因みに、綿の栽培・収穫(園芸療法)→染色(野草摘みの散歩)→糸つむぎ→機織りや組み紐→裁縫と展開を広げられるのも特徴です。実際に、本学OT学科の先輩の中には、広大な自然の中の東京西キャンパスを利用して、綿の栽培や野草染色、紬、作品作りまでを行った学生もいましたよ。

 
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