教育・研究

図書館だより 第7号 1998.11.10

[目次]


著作権ってなあに?

 著作権なんて関係ないよ、なんて思っていませんか?著作権は私たちに身近な権利なんですよ。例えば皆さんがノートの片隅にちょっとした絵を描いたとします。上手い下手に関係なく、その絵は著作物、それを描いた皆さんはその絵の著作者ということになります。そして、皆さんはその絵について他の人に勝手に利用されない権利(著作権)を持ちます。ただ、そのような著作物が出版されたりして利用されることがほとんどないため、自分が著作者であることや著作権を持っていることを普段意識することがないだけなのです。

<著作権とは...>

 著作権についてとりきめた法律を著作権法といいます。著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しており、例に示した絵のほかにも、小説、曲、彫刻など、この定義にあてはまるものであれば著作物となります。著作物を創作した人を著作者といいます。そして、著作物を複製したり、出版したり、放送したりして利用することについて、著作者に認められる権利を著作権といいます。著作権は著作物を利用して収益をあげることのできる財産的な価値のある権利です。また、著作者は人格的な利益を保護される著作者人格権をもっています。これらの権利は、著作物を創作した時点で発生し、登録等の手続きを一切必要としません。なお、著作権は原則として著作者の死後50年間まで保護されます。
 このような著作権制度は、著作者の利益を保護することによって文化の発展に寄与することを目的としています。

<著作権とコピーサービス>

 ここでは皆さんと関係の深いコピーサービスにおける複写についてご説明します。
 著作権の一つである複製権は著作物を形のあるものに再製する権利で、すべての著作物がもつ最も基本的な権利です。手で写したり、印刷したり、写真に撮ったり、複写したり、録音したり、どのような方法であれ、再製する場合には複製権が及び、著作者の許諾が必要となります。
 しかし、文化の発展に寄与することを目的とした著作権制度が、かえってそれを妨げることのないよう、著作権法第31条では、次の条件を満たしている場合に限り複製権を制限し、図書館等でのコピーサービスを認めています。

条  件
1) 図書館が所蔵している資料を用いて複製すること。
2) 利用者の調査研究の目的のための複製であること。
3) 公表された著作物の一部分の複製であること。(一部分とは少なくとも半分を超えないこと)。ただし、次号が既に出版されており、通常の入手経路では入手することができなくなった雑誌のように、発行後相当期間を経過した定期刊行物中の個々の著作物については、全部を複製することができます。
4) 利用者一人につき一部の複製であること。

 図書館内に設置されたコピー機を使用して複写を行う際は、これらの条件を満たしているかに注意して、著作権法に沿った複写を行ってください。  

図書館内のコピー機でこんな複写をしていませんか?

・授業のノートを複写する。
・友人の所有する教科書を複写する。

→ 図書館が所蔵している資料ではないので複写できません。 <条件1>
・地図帳の見開き一ページ全部を複写する。
・本一冊まるごと全部を複写する。

→ 著作物の半分を超える複写はできません。<条件3>  
・観光旅行に行くため地図を複写する。
・鑑賞のために絵画を複写する。

→ 娯楽のための複写はできません。<条件2>
・自分の分を複写するついでに友人の分まで複写する。
・紛失したときのために二部複写する。

→ 一人につき一部しか複写できません。 <条件4>

 


卒研生の皆さん卒業研究は進んでいますか?

-卒研生必見!!図書館利用ガイド-

 図書館だより第4号で「文献探索とその入手:論文を書くために」と題して文献の探し方を取り上げましたが、今回は論文をまとめるにあたり図書館がお手伝いできる事についてお話しましょう。

● 参考文献は探せましたか?

 論文を書く場合には過去の研究や文献を参考にします。探し方は図書館だより第4号をご覧下さい。抄録誌やCD-ROM、WWWを使っても検索結果に満足できない時は、もう一つ方法があります。  

<オンライン情報検索>

  当館で所蔵している二次資料による探索では十分な結果が得られない場合には、外部のオンラインデータベースを検索する事ができます。オンライン検索は図書館員が代行して検索します。カウンターに申込書がありますので、申し出て下さい。
 情報検索を希望する際、キーワードまたは検索したい具体的な内容をご用意下さい。キーワードがあまりに抽象的だったり、大雑把すぎたりすると検索できません。また検索には不向きな言葉もありますのでご注意下さい。

【検索事項の書き方 -良い例(○)、悪い例(×)-】

【申込書記入例】

○ 静電気の発生条件について。静電気の帯電防止について。
× 静電気について。

(理由)静電気の何について探しているのかわかりません。もっと具体的に。

○ 生体リズムと人間の作業能率について。
× 人間工学と生体リズムについて。

(理由)人間工学は広い範囲を示す言葉なので、 もっと具体的に。

○ 東洋水産、エースコック、明星食品の即席めんについて。
×まるちゃん、エースコック、ペヤングに関する論文。    

(理由)登録商標は該当しにくいので、会社名や製品名に。但し、「写ルンです」や「ウォークマン」のように、本来は商品名でも製品を示す言葉として一般に定着しているものは検索できます。

 

● 参考文献は集まりましたか?

 苦労して探した参考文献なのに、当館に所蔵されていないとあきらめていませんか? 以下の3つの方法で他の大学の図書館も活用しましょう。いずれも利用する際は、カウンターで申込をしてください。

<文献複写>
 当館で所蔵していない文献はコピーを取り寄せる事ができます。雑誌記事以外にも図書の一部分、新聞記事なども取り寄せる事ができます。但し、複写料金等の実費を負担して頂きます。

<相互貸借>
 当館で所蔵していない図書が必要な場合、他大学の図書館から借用する事ができます。但し、参考図書、雑誌、非図書資料は借用できません。

<他大学図書館の利用>
 相互貸借による図書の到着までの約1週間が待てないほど急いでいる場合は、求める資料を所蔵している図書館で直接閲覧する事もできます。この場合、当館の発行する紹介状が必要です。

 

● 論文のまとめ方がわからなくて悩んでいませんか?

 論文に要求される文章を書くことや構成や体裁を整える事は、慣れていないと非常に難しく感じるものです。でも、くじけてはいけません。当館所蔵の資料があなたを助けてくれるでしょう。図書館には論文の書き方を扱っている図書やビデオがあります。ここではその中の数点をご紹介します。紹介しきれない分は別にリストを用意してあります。ご利用下さい。                

<図書>          

『理科系の作文技術』 木下是雄著 請求記号:407/Ki46

 理科系の人が仕事のために書く文書 <論文・レポート・調査報告・仕様書等> は事実(状況)と意見(判断)の伝達を目的としています。この目的を達成するには、まず、人にちゃんと読んでもらえる文章を書く必要があります。本書は、わかりやすい簡潔な文章を書くための技術を教示しています。理科系の文書に欠くことのできない数式、図表の書き方や、他人の論文を引用する際の著作権上の注意点など、たくさんの具体例を示しながらやさしく説明しています。          

『論文の書き方』 澤田昭夫著 請求記号:816.5/Sa93

 本書は論文を書くまでの下準備からまとめあげるまでの過程に重点をおいて書かれています。トピック選び、資料探し、カード作り、アウトラインの組立て、文章化等のノウハウを具体的かつ丁寧に説明しています。また、「読む」「話す」「聞く」は根本的には「書く」ことと同じ一つの言語活動であるという考えのもと、良い読み方、良い話し方、良い聞き方とはどういうものかについても触れています。論文とは何か、どうやって書けばよいのか悩んでいる方に是非一読することをおすすめします。  

<ビデオ>         

 『文献探索の基礎』 時間:18分

 テーマが決まったら、参考にする資料を集めます。でも、やみくもに書店や図書館の書架を探しても非効率的です。そこで、役に立ちそうな本や雑誌論文等を探す際の道具となるのが文献(二次資料ともいいます。)です。このビデオは、文献にはどのようなものがあり、どんな特徴があるのかを紹介しています。          

『レポート・論文のまとめ方』 時間:28分

 レポート・論文をまとめる過程を、「ステップ1:テーマの決定」から「ステップ10:仕上げ」まで10段階に分けて、順を追って説明しています。大学図書館を舞台に、女子学生がレポートをまとめていく姿を物語風に描いています。 


リレー・エッセイ  ふたことみこと

「アルトハイデルベルク回想」      マネジメントシステム学科教授 宮津 隆

 数年前、成田でフランクフルト行きのフライトを待っているとき、白髪の十数人のグループに出あったことがある。彼等は旧制山形高校のOBで、ハイデルベルク城のある丘に立ち、「酒樽の番人のペルケオの歌」を唄いに行く、という優雅なツアーであった。戦前・戦中の旧制高校のドイツ語の授業によく使われていたのが「アルト ハイデルベルク」の物語であり、その中に出てくる歌なのである。
 ハイデルベルク大学は600年の歴史を持つドイツ最古の大学であり、ここに留学していた大候国の王子と学生酒場のウェートレス ケイティのはかないラブロマンスは、私たち旧制高校生のみならず、戦前の日本人に共通な感性に訴えるものがあったようで、日劇でのロングランの記録が残っている。
 不思議なことに、ドイツ人の多くはこの小説のことを知らない。ケイティのいた酒場「ローテルオクセン」は今も残っているが、そのバーテンでさえ知らなかった。しかし、ツアーバスのコンダクターによれば、この物語は実際にあったことで、ケイティはプリンセスにはなれなかったが、オーストリーの学生と結婚して、ウィーン大学医学部の教授夫人になり、幸福な余生を送ったのだそうである。なお、この物語は映画化されて、米国でもよく知られているためか、ハイデルベルクを訪れる米国人は年間約3万、日本人は約2万なのに、欧州全体でもそれ以下に過ぎないとのことであった。日本人が多いのはハイデルベルクと京都が姉妹都市であり、ネッカー川に沿う「哲学者の路」が京都にもあることなどによるものかも知れない。何れにせよ、ハイデルベルクは私のもっとも好きな町のひとつであり、余生を送れたら、とさえ思っている。


本学の先生方からの寄贈資料(期間:'98年4月~10月)

本学の先生方から、下記の通り貴重な資料のご寄贈を賜りました。厚くお礼申し上げます。

<図書>
大山幸房先生『Copyright law of Japan』他4冊
高橋 清先生『先端工学』他1冊
中村元一先生『材料・技術・情報探索ガイドブック』他1冊
松本敏浩先生『複素関数の基礎』他2冊
山田惠彦先生『わが歩みし道 南原繁』他7点
<雑誌>
高橋 清先生『電子材料』他6点
村上 雄先生『ふぇらむ』他1点
宗宮重行先生『Jounal of Materials Research』他7点
谷口文朗先生『The OEDC Obserber』

  


■ ■ ■ Q&A ■ ■ ■

Q&AQ 図書館の本を持っていないのに、なぜ出口でブザーが鳴るの?

A 図書館の出口でブザーが鳴るのを聞いたこと があると思います。本来なら貸出の手続きが 済んでいない資料を持ち出すとブザーが鳴る仕組みになっていますが、傘・鍵・レンタルビデオ等に、また最近では携帯電話に反応して鳴ってしまうことがあります。もし、間違って鳴ってしまったらご容赦ください。