図書館だより 第8号 1999.4.1
[目次]
図書館長 大津賀 望
私の恩師は、セラミックスの権威で多くのすばらしい研究を残された、「素木洋一」という先生でした。この先生は非常に多くの書籍を読まれ、ご自分でも沢山の本を書かれました。体の頑健な先生は日頃「日本新記録の齢まで生きるよ。」とか、私が病気の折りには「おまえの葬儀は俺がしてやるから安心して成仏しろ。」などと言われていました。ところが、歳を召されたので昨年検査のため入院され、そのまま急逝されてしまいました。お仕事のかたわら、酒を嗜み、煙草を沢山吸われた豪傑です。(この部分は真似しないでください。)
そんな先生に、私がまだ若い頃、仕事に関する本で何から勉強したらよいかお聞きしましたところ、「自分でこれと思う本を身に付くまで良く読みなさい。そして丸呑みしないで、自分の考えを重ねていきなさい。」と言われました。それからは仕事に関する本を読むときは気合いを入れて読むようになりました。また著書の校正のお手伝いをしたことがありますが、「間違いやおまえがおかしいと思うところを指摘しろ。」と言われました。そのときは緊張して本を読み、自分の意見を持つことの大事さを学びました。
つまりこれらの言葉は、「座右の書を持ち、思考力を養い、科学技術者としての創造性の大切さに目覚めよ。」という意味であると思います。(先生の著書は図書館に多くありますので見てください。)
新入生の皆さん、また新しい学年を迎えた皆さん、上野原の春は緑が一杯で素敵です。この気候の良い時から本と親しむようにしてみませんか。図書館を利用して、自分でものを考える思考力を養い、知識の習得に努め、不足している勉強の部分を補うようにして下さい。
私たちは皆さんに図書館を有効にご利用いただけるように努めて行きたいと思います。教職員の皆様も全学的な立場からのご意見をどしどしお寄せいただければ幸いです。図書館員一同、学生および教職員の方々のご利用をお待ち致しております。
注(1) 身辺、またはかたわらの意味。
本学の図書館をはじめて利用する新入生や、上級生でもあまり図書館を利用したことのない皆さんのために、二人の学生(AくんとBくん)の会話により、基本的な利用案内をいたします。お気軽に図書館においでください。そして、はやくどこに何があるか覚えてくださいね。
--ある日、キャンパスで。--
A:夕べの巨人・阪神戦の結果、知ってる?
B:知らなーい。図書館に行ってみれば。
A:えっ、図書館に?
B:そうだよ。図書館にはスポーツ新聞が4紙もあるからサ。
A:図書館って、専門書しかないのかと思ってた。何となく敷居が高くて、実はあまり行ったことがないんだ。
B:それなら、いっしょに行って、図書館を案内してあげるよ。
--ふたり、図書館に向かう。--
B:図書館に入る前には、携帯電話やポケベルの電源を切って、と。
A:めんどーだな。自分ひとりくらい、切らなくたってわからないよ。
B:図書館の中でピーピー鳴るとうるさいよ。勉強している人の迷惑にもなるし。先に切っておいたほうがいいよ。
A:....(しぶしぶ電源を切る。)
--ふたり、入口を入る。--
B:ほらね、新聞はここ。スポーツ新聞は向こう側にあるよ。
A:ほんとだ。
B:今日の新聞は台の上にあるけど、今週の新聞は台の横にまとめて綴じてあるんだ。少し古いものを見たいときは、カウンターに言えば出してもらえるよ。過去2か月分ぐらいは保存してあるんだって。それに、「朝日新聞」と「日本経済新聞」なら縮刷版が3階にあるよ。
A:なるほど。えーと、夕べの試合は...と。あった、あった。(しばらく新聞に見入る。)
ところで、ここには他に何があるの?
B:1階には経営や社史、それにスポーツや小説などの本があるんだ。すぐそこのカウンターで、本を借りたりできるんだ。
A:あそこにコンピュータなんてあるけど。
B:ああ、あのコンピュータは本を探すときに使うんだ。WWWって表示が出ているコンピュータは、インターネットのホームページが見られるよ。
A:ふーん。自由に使っていいの?
B:もちろん。
A:でも、難かしそー。
B:困ったときはカウンターで訊ねればいいんだ。ちょっと使ってみる?
--目録検索用端末の前で。--
B:たとえば、「坊っちゃん」って入れると...
(カシャ、カシャ)...ほらね、出てきた。
A:おもしろーい。じゃあ、この間授業で紹介された本はあるかなあ。たしか「確率モデルによるナントカ」っていってたけど。
B:じゃあ、まず「かくりつ」って入れて..
(カシャ、カシャ)..次に「もでる」って入れて、っと..
(カシャ、カシャ)..おっ、出たぞ。えーっと、これは2階にあるはずだ。
--検索した本を探しに2階へ。--
A:2階にはどんな本があるの?
B:コンピュータや数学、生物、化学、工学などの本があるんだ。それから、「ぴあ」や「Newsweek」とかも置いてあるよ。
A:そこにある視聴覚室では、何が利用できるの?
B:ビデオが見られるんだ。
A:たとえばどんなビデオがあるの?
B:いろいろあるけど、「ゴーストバスターズ」とかの英語字幕付き映画や、「地球ファミリー」っていう動物の生態を撮ったビデオなんておもしろいよ。
A:利用するときはどうすればいいの?
B:カウンターで申込みをするんだ。
A:視聴覚室の他にも申込みをして使う部屋ってあるの?
B:3階のセミナー室がそうだよ。グループ学習をするときにはもってこいの部屋だよ。
A:ふーん。3階か。
B:3階には他にも、1階にあった雑誌の古いものや、「岩波新書」などの文庫本があるんだ。
--書架を、キョロキョロ。--
A:あっ、見つけた。この本だ。せっかくだから、借りて行こうかな。
B:本を借りるときは、学生証と本をカウンターに持って行くんだ。学部学生は5冊まで、14日間借りることができるよ。本の後ろに返却期限を押してくれるから、その日までに返せばいいんだ。返すときもカウンターに持って行くんだよ。
A:返却が遅れると怒られるの?
B:遅れた日数分貸出停止になるよ。もし、返却期限までに読み切れないときは、もう一度、本と学生証をカウンターに持って行けば、続けて借りることができるんだ。
--再び1階へ。--
A:野球の結果もわかったし、おまけに本も借りたし。何か得した気分。もっと図書館を知りたくなってきた。
B:それなら、「利用案内」や「図書館だより」を読むといいよ。それから掲示板のチェックも忘れるなよー。
★1999年から下記の外国雑誌の購入が中止になりました。 ・Carbon ★1999年から下記の外国雑誌を新規に購入することになりました。 ・Current Contents on CD-ROM : Engineering, Computing & Technology |
「読書のすすめ」
マネジメントシステム学科教授 宮津 隆
筆者の最終講義のときの「学生諸子へ贈る言葉」の一つは「読書のすすめ:人の2倍の本を読むということは、2倍生きていることに等しい。」であった。
1945年12月下旬、引き揚げ列車の出発するソウル貨物駅の近くで、京城大1年生だった筆者は困り果てていた。
11月に家族4人で熊本に引き揚げ、親戚の家に世話になっていたものの、手で持てるだけのわずかな衣類は食糧との交換で消えてゆき、仕事はなく、学校にも行けそうにない。祖父の代から朝鮮で築いていたささやかな財産の土地と家は韓国人に売れたものの、米軍の占領下では登記できるかどうか判らないという理由で、代金の半分しかもらっていない。あの残金さえもらえたらまた大学に行ける... はかない望みを抱いて帰国韓国人にまぎれこんで密航し、買い主の住む懐かしのわが家へ行ったのだが、無情にも米軍の布告で、終戦以後の売買契約は一切無効になっていたのである。そのため、前渡し金を返さなければ日本には帰さない、と身柄を拘束される羽目になってしまった。何とか脱走に成功し、まだ残留していた友人の部屋に隠れ、駅に行ったのだがチェックが厳しく、とても乗れそうにない。その時である。シャトーデ イフの囚人エドモン・ダンテスが袋に入れられた死体と入れかわって脱獄したストーリー『モンテ・クリスト伯』を思い出したのは。早速友人の家で大きなリュックを作ってもらい、荷物になって貨車に積みこまれ、ソウルを離れてから、ナイフで袋を切って、這い出したのである。特急なら6時間行程の京釜線を3日かかって釜山に着いたときは、クリスマス・イヴ。引揚者の検査をする米兵たちは酔っぱらっていて、ノーチェックだった。
ともあれ、「読書のすすめ」とは私の体験からの言葉なのである。
死者の魂を天国に導くのが司祭の務めならば、司書のそれは人生を豊かにするためのガイドといえるかもしれない。
入館者数 | 貸出冊数 | ビデオ利用数 | CD-ROM利用数 | ||
143,352人 | 教職員 | 大学院生 | 学部学生 | 185点 | 40点 |
864冊 | 1,009冊 | 8,384冊 |
Q 図書を返しにきたんですが、図 書館が閉まっています。どうしたら いいですか?
A 閉館の際は図書館の入口にブックポストを置いておきます。返却する図書はこのポストに入れてください。